【日本語】「うつ」と「たたく」の違いは?
今日は日本語の話です。
先日日本語の授業中、
「おつりがでてこないんですが、どうしたらいいですか?」
という質問に
「(機械を)打ったらいいと思います。」
と答えた学習者さんがいました。
これは
「(機械を)たたいたらいいと思います。」
と言いたかったのです。
そこで、この二つの言葉の違いについて調べてみて、考察も加えました。
「うつ」と「たたく」の使い分け
「うつ」と「たたく」に共通した意味
「うつ」と「たたく」に共通した意味は、「対象に道具や手などを瞬間的に強く当てること」です。主に人間の意志的動作を指します。
「うつ」と「たたく」の違い
次に違いを見ていきましょう。
「打つ」に固有の用法
意志的でない動作
例)転んで頭を打った。
×転んで頭をたたいた。・・・これは明らかにおかしいですね。
たたいて中に何かを入れる動作
例)金づちでくぎを打つ。
△金づちでくぎをたたく。・・・あら?これは言えなくもないような気がします。
例)予防注射を打つ。
×予防注射をたたく。・・・これは完全にアウトですね。
「撃つ」と書いて、銃弾や弓矢などを対象に当てる動作
例)鉄砲で鳥を撃った。
×鉄砲で鳥をたたいた。・・・意味が完全に変わりましたね。
「討つ」と書いて、戦いで相手を倒す動作
例)敵の大将を討った。
×敵の大将をたたいた。・・・これでは死にませんね。
慣用的な用法
参考にした資料にはここまでしかなかったのですが、「心を打つ」「胸を打つ」という慣用的な用法もあります。
例)彼のやさしさに心(胸)を打たれた。
×彼のやさしさに心(胸)をたたかれた。・・・意味が分からないですね。
ボールをたたいて送る動作
これも資料にはありませんでしたが、スポーツの球技においてボールをたたいて送る動作、というのもあると思います。
例)バッターがホームランを打った。
×バッターがホームランをたたいた。・・・言えませんね。
例)バレーボールでサーブを打つ。
×バレーボールでサーブをたたく。・・・これも言えません。
鐘を打つ
こんなのもあります。鐘は「うつ」と相性がいいように思います。たたいて音を出す動作でも早く反復できないからでしょうか?
例)時計が12時の鐘を打った。
×時計が12時の鐘をたたいた。・・・おかしいです。
「たたく」に固有の用法
探せばまだありそうですが、とりあえず「うつ」はこの辺にしておいて、次は「たたく」を見ていきます。
反復して打つ、反復してたたいて音を出す動作
例)母の肩をたたいてあげた。
×母の肩を打ってあげた。・・・何か警策を与えている(禅宗で座禅をする修行者を木の棒で打つこと)ような印象です。
例)子どものおしりをたたく。
△子供のおしりを打つ。・・・「うつ」鞭や棒など、または飛び道具を使っている印象になりますね。「ぶつ」と読むと手でたたく意味になります。
例)戸をたたく音がした。
×戸を打つ音がした。・・・これも手でたたいている気がしません。雨が戸を打つならいえますね。
例)太鼓をたたく。
〇太鼓を打つ。・・・これは言えます。ただしどちらかというと1度ずつ区切って大きく打つイメージですね。
例)手をたたく。
〇手を打つ。・・・言えますが、意味が「それでOKする」という意味になります。
厳しく非難するという意味
例)政治家のスキャンダルを週刊誌がたたいた。
×政治家のスキャンダルを週刊誌が打った。・・・意味が通じませんね。
いかがでしたか?
何気なく使っている言葉でも意外にいろいろな意味があることに気が付きますね。外国語ではその分け方、線の引き方が違っていることがままあるため、習う場合も教える場合も注意が必要です。
韓国語でもここにあげたものにはそれぞれ違う単語があるものも多いです。치다(チダ、打つ),때리다(ッテリダ、たたく),두드리다(トゥドゥリダ、なんどもたたく),부딪치다(プディッチダ、ぶつかる、ぶつける),박다(パkタ、くぎなどを打ちこむ),쏘다(ソダ、撃つ)などなど・・・。
言葉って面白いですね。
(参考資料)
『基礎日本語辞典』 森田良行著 角川書店
『使い方のわかる類語例解辞典』 小学館
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