「情が厚い国」を実感させる事件(韓国のニュースより)
韓国には人情がまだ生きている
「一億総中流」と言われた時代があったことすら忘れるほどに、貧富の格差が拡大している日本。
これは日本だけに限ったことではなく、世界的に見ても同じような流れになっているようです。
2017年に、国際非政府組織(NGO)オックスファムが、世界で最も裕福な8人の資産が、世界人口のうち下位50%(約36億人)の合計額とほぼ同じだとする報告書を発表したこと(ロイター)は記憶に新しいです。
ほんの一握りの富裕層を除いて、多くの人の生活が苦しくなり、どんどん世知辛い世の中になってきましたが、そんな中韓国で、心が温まるニュース(mbcニュース2019年12月13日付)を見つけたのでご紹介します。
以下、ニュースの翻訳です。
空腹のため盗みを働いた現代版ジャンバルジャン。彼らの運命は?
今ごらんになっているこの画面は、三日前、仁川のある大型マートの事務室です。
両手を合わせて頭をうなだれたまま立っている二人。
30代の父親と彼の十二歳の息子です。
彼らはこのスーパーで牛乳とリンゴなどの食べ物を盗んだため摘発されました。
「あまりにもお腹がすいて物を盗んだ」と打ち明ける親子に、しばらくして驚くべきことが起こります。
キム・セロ記者の報道、一緒にご覧ください。
◀ レポート ▶
去る10日、午後4時頃。
仁川(インチョン)のあるスーパーの食品売り場で、カバンを背負った子供と一人の男性が歩いてきます。
隅でしばらくためらっているかと思いきや、子供が背負ったカバンを開けて、こっそりと商品を入れます。
彼らは34歳の父と12歳の息子。
ところが、彼らの手際の悪い窃盗は、CCTVを見ていたマート職員にすぐ発覚しました。
[当時出動警察官]
「父親は体をぶるぶる震わせ、汗を流しながら、ずっと許してくれと頼んでいる状況でした。」
通報を受けた警察が到着すると、父親は頭を下げました。
息子のかばんから出た品物は牛乳2パックとリンゴ六つ、そして飲み物いくつが全てでした。
金額で計算すれば、およそ一万ウォン前後、この男性は「とてもお腹がすいたあまりに、してはならないことをした」と、涙を流しました。
[当時、出動した警察官]
「(彼らは)基礎生活受給者に選定されていましたが、4人家族が生計を維持するには難しい状態でした。」
タクシー運転手をしていた男性は、糖尿病や甲状腺疾患にかかっており、病気のために六ヶ月間仕事ができなかったと打ち明けました。
住んでいる賃貸アパートには(彼の)母親と7歳の次男が待っていました。
事情を聞いたマートの主人は処罰を望まないと言いました。
[チョ・ジンファン/マート代表]
「私も子供を育てる立場でこれは告発ではなく私たちが指導する次元で・・・」
警察も軽微な事案と見て、この親子を訓戒放免措置にしました。
ただ、彼らを送還する前に、まず近くの食堂に連れて行き、暖かいクッパを一杯ずつ食べさせてあげました。
[イ・ジェイク警衛/仁川中部警察署]
「朝ご飯も昼ご飯も全く食べていないと、父子が言うからですよ。 今の世の中でご飯も食べられない人がどこにいますか。」
ところが、しばらくして灰色の服を着た一人の男性が、店の中に入って来て、いきなり白い封筒をこの親子の食卓の上に投げるように置き、そのまま外に出ていきます。
[飲食店の従業員]
「子供がその時ついて行ったんです。 だからここ(後ろ)で話してるのを見たんだけど、ぶっきらぼうにその子を押しやりながら(封筒を)持って行けって…」
封筒には、現金20万ウォンが入っていました。
正体の知れないこの男性は、どうやって彼らの事情を知ったのでしょうか。
先ほど、そのマートで父と息子が良い取り計らいを請うていた時、事務所の外から見える灰色の服。
封筒を渡して消えたまさにその男性です。
偶然、父子の気の毒な話を聞いて、現金を引き出し、わざわざ食堂までついて行き、手渡したのです。
[イ・ジェイク警衛/仁川中部警察署]
「二人の父子にとって大きな勇気になったと思います。 まだ社会が干からびておらず(人情が生きていて)、一生懸命努力すれば(きっと)…一番ありがたい方になるでしょうね。」
警察が感謝状を届けようと、この灰色の服の中年男性を探しましたが、結局見つけられませんでした。
警察は、行政福祉センターを通じて父親の働き口を斡旋し、息子には無料給食カードがもらえるように手助けしました。
また、マートの主人は、この父子にコメと生活必需品を支援するという意思を伝えました。
MBCニュース キム・セロです。
ーーーーーーーーーーーーーーー引用終わりーーーーーーーーーーー
万引きされかけたのに処罰を望まず、逆にお米と生活必需品の支援を申し出たマートの主人、駆け付けても訓戒放免処置にとどめて食堂に連れて行って自腹でご飯をごちそうした警察官、たまたま居合わせただけなのに20万ウォン(約2万円弱)を届けに来て名乗らずに立ち去った男性。みんなとてもやさしくて、思いやりがあり、それを行動に移せるところがなんとも素敵です。その後の警察の対応(就職のあっせんと無料給食カード)も素晴らしいです。きっとこの父子はこれから生活を立て直し、立ち直っていくのではないかと思います。
このニュースを見て、家族で万引きをする第71回カンヌ国際映画祭で最高賞の パルムドール賞を受賞した是枝裕和監督の『万引き家族』を思い出しました。あの映画にも情に厚い人もいましたが、結局最後はしょっぱい幕引きとなっていました。
万引きは悪いことですが、そうでもしないと生きていけない人がいるという悲しい現実があります。
これを変えられるのは政治の力です。税金の「富の再配分」という役割をきちんと認識して、必要なところにちゃんとお金が回るように税の使い方を精査し、少しずつでも社会構造を整えていく必要があります。
なのに私の周りを見渡すと、政治に関心を持っている人はほとんど全くいません。日本がどんどん元気がなくなって暮らしにくくなっているのは、間違った政策をとり続けているからだと早くみんなに気づいてもらいたい・・・。そのために何ができるのか、日々模索中です。
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