スヌンが済んでも終わらない!韓国の大学受験制度~スシ수시とチョンシ정시
受験生のお子さんがいる知り合いに、
「スヌン(수능:韓国版大学入試センター試験)が終わって一息ですね」
と声を掛けたら、
「スヌンの直後から12月の初めにかけて、スシ(수시:随時)の論述や面接の試験があるからまだ気が抜けない」
との答えが返ってきました。
実は韓国の大学受験の方法は大きく二つに分かれています。その一つがスヌンの成績が重視されるチョンシ(정시:定時)と呼ばれるもの、そしてもう一つが内申点や推薦書などが重視されるスシ(随時)です。
実はこのスシ(随時)で合格を勝ち取る学生の割合の方がかなり高く、全体の8割にもなるのです。
せっかくなので韓国の大学入試についてもう少し詳しく調べてみました。
韓国の大学入学試験の選抜方法
スシ(수시:随時)募集
上にも書いた通り、スシ(수시:随時)募集は、現在の韓国の大学入試の主流となっています。
スシ(수시:随時)募集の中には、チョニョン(전형:詮衡)と呼ばれる以下の4種類の選考方法があります。
学生簿教科選考(학생부교과전형:ハkセンブキョクァチョニョン)
学生簿総合選考(학생부종합전형:ハkセンブチョンハpチョニョン)
論述選考(논술위주전형:ノンスlウィジュチョニョン)
実技選考(실기위주전형:シlギウィジュチョニョン)
それではそれぞれの選考方法についてこれから細かく見ていきましょう。
学生簿教科選考(학생부 교과 전형:ハkセンブ キョクァ チョニョン)
韓国の高校には学生一人一人に対して作成する『学校生活記録簿(학교생활기록부:ハッキョセンファlキロkプ)』というものがあります。これは日本でいう内申書のようなものです。省略して『学生簿(학생부)』とも言います。
この選考方式では、この『学校生活記録簿』に記録された高校1年生から3年生の前期までの成績が合否に大きな影響を及ぼします。100%内申点だけで選抜する大学もあれば、内申点と面接の点数を合わせて選考する大学もあります。
この学生簿教科選考は、全大学の募集定員の41.4%(2019年大学入学基準)ほどに達し、規模が最も大きい選抜方法です。
学生簿(학생부:ハkセンブ)
学生簿の各教科の成績が絶対的な選考基準要素となります。各大学ごとに成績の反映方法が異なります。(詳しくは韓国の大学入学情報ポータルサイト:オディガ(어디가)参照)一部の大学では成績以外に出欠や奉仕活動時間数も考慮されます。
面接(면접:ミョンジョp)
学生簿教科選考で、一部の大学は面接を実施しています。各教科の内申点で一次選抜を行い、合格者を対象に面接を行う大学もあれば、全員に面接を行って内申点と面接点の合計で合否を決定する大学もあります。
スヌン最低学力基準(수능 최저학력기준:スヌン チェジョハンニョッキジュン)
大学ごとにスヌンで最低合格ラインを設けている場合が多いです。そのため受験生はスヌン対策も怠ることができません。
学生簿総合選考(학생부 종합 전형:ハkセンブチョンハp チョニョン)
学生簿総合選考では、『学校生活記録簿』の内申点だけではなく、学生が持っている多様な能力を考慮して受験生を総合的に評価して選抜する選考方法です。ここでももっとも重要な評価資料は『学校生活記録簿』です。『学校生活記録簿』の中の、教科成績以外に、成績に関連した部分として受賞経歴、細部能力及び特記事項、また、創意的体験活動と関連のなる部分として自発的同好会、クラブ活動、奉仕活動、進路活動などが重視されます。
それにプラスして、自己紹介書、推薦書、学校紹介資料、などを基にして、学生の成績だけでは分からない特性を総合的に評価して選抜します。
この学生簿総合選考は、全大学の募集定員の24.3%(2019年大学入学基準)ほどですが、主要な上位圏の大学ではスシ(随試)募集中最も大きい比重を占めている選抜方法です。
学生簿(학생부:ハkセンブ)
学生簿の各教科の成績、成績の推移、細部能力及び特記事項、受賞経歴などで、基礎学力の検証と、募集分野に対する関心の高さ、成長可能性などを評価します。
行動特性および総合意見の欄は教師の推薦書も同然なので、まじめな学校生活を送ることが重要です。
自己紹介書(자기소개서:チャギソゲソ)
自己紹介書は、行ったことの羅列ではなく、経験の価値が浮き彫りになるよう具体的な実例を挙げて書くことが求められるため、高校生活の中で自分の活動を記録しておくことが重要になります。
面接(면접:ミョンジョp)
面接を通して、提出書類の真偽と学生の力量を確認されることになります。提出書類の内容を熟知していく必要があります。
スヌン最低学力基準(수능 최저학력기준:スヌン チェジョハンニョッキジュン)
一部の大学では学生簿総合選考でスヌン最低学力基準を適用しています。特に上位圏の大学や医科大学の場合高い基準が要求されます。
論述選考(논술위주 전형:ノンスlウィジュ チョニョン)
全大学募集人員の3.8%が論述選考により選抜されます(2019年入学基準)。論述選考はスシ(随時)募集の中では学生簿の比準が低いので、内申が振るわなかった学生も中上位圏の大学に志願できる貴重な選考方法です。そのため競争率が高いです。
論述(논술:ノンスl)
論述試験は出題範囲により、文系論述と理系論述に大別されます。論述とはいっても統計や図表などにより数学的知識が問われるところもあります。前年度の既出問題とその出題意図などは各大学のホームページで公開されているそうですから要チェックです。
スヌン最低学力基準(수능 최저학력기준:スヌン チェジョハンニョッキジュン)
スシ(随時)募集の中で最もスヌン最低学力基準が高い選考方法が論述選考です。論述選考志願者の約50%がスヌン最低学力基準を満たせずに不合格となっています。
実技選考(실기위주 전형:シlギウィジュ チョニョン)
数学、科学、語学、芸術、体育など、特定分野において卓越した実績と能力を持つ学生を選抜する選考方法です。
多くの場合スヌン最低学力基準は要求されず、実技、面接、各種大会の受賞実績、公認の語学成績、自己紹介書、推薦書などの書類を中心に選抜します。
チョンシ(정시:定時)募集
チョンシ(정시:定時)募集は、スヌンの成績を重視する選考方法です。現在の韓国の大学の学生募集人員の約2割強ほどとなっています。現在はスシ募集偏重のため、2022年度からはチョンシ募集の割合を3割に増やさないと補助金減額などのペナルティが各大学に課されることになったそうですが、それでもスシ募集優勢には変わりありません。
チョンシ(정시:定時)募集の中にもやはり、チョニョン(전형:詮衡)と呼ばれる以下の2種類の選考方法があります。
スヌン選考(수능위주 전형:スヌンウィジュ チョニョン)
実技選考(실기위주전형:シlギウィジュチョニョン)
それではそれぞれの選考方法についてこれから細かく見ていきましょう。
スヌン選考(수능위주 전형:スヌンウィジュ チョニョン)
この選考方式ではスヌンの成績が最重要選考要素となります。この選考方式では大部分の大学が100%スヌンの成績で選抜しますが、一部の大学で学生簿も考慮されます。
全募集人員のうち23.8%がこのスヌン選考方式で選抜されます(2019年入学基準)。2022年度からはこの選考方式が今よりも拡大される予定です。
実技選考(실기위주 전형:シlギウィジュ チョニョン)
実技選考のほとんどはスシ(随時)募集で行われており、チョンシ(定時)募集ではほんの一部人員だけが選抜されます。
以上、6種類の選考方法を詳しく調べてみました。それで分かったことは、ただがむしゃらに勉強だけしていては不十分で、高校に入る前の段階から、大学入試のための戦術を立ててそれに合わせて実績を積み上げていくことが大切だという印象を受けました。例えば、頭のいい高校に入ると、内申点が稼げないのです。そのためにわざと中程度の高校を志望したりします。また、どの高校は学生簿をしっかり描いてくれるとかいう噂も出回ったりします。だから教育ママの情報力が大切なのでしょう。1年生のころから勉強の傍らで大会を調べて出たり、関係のあるボランティアをしたり…。
韓国の高校生は本当に大変そうです。
試験をはしご?大忙しの受験生
各大学別の論述や面接の日程は重なることもよくあります。そうすると、両方とも受けたい受験生は一つの大学から次の大学へ短時間のうちに移動しなければなりません。でも地方からソウルへ受験に来ている学生も多く、ソウルの地理や交通機関に不慣れですばやく移動できません。タクシーに乗っても、常に交通渋滞が起こっている大都会ソウルです。予想以上に時間がかかってしまうこともよくあります。そこでこの時期大学前に大挙してくるのがクイックサービスのオートバイたちです。クイックサービスにとっては最高の稼ぎ時。普段の何倍もの料金でオートバイの後ろに受験生を乗せて、渋滞する車の横をスイスイ。でも時には急ぎすぎるあまり、信号無視をしたり、歩道を走ったり…。
頑張れ受験生!くれぐれも事故にあわないように~!!
♥大雑把な韓国の大学入試の日程はこちらにまとめてあります。→2020年度韓国大学入学選考(大学入試)日程
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