韓国在住者から見た輸出規制と日韓関係の今後 - True Vine

韓国在住者から見た輸出規制と日韓関係の今後

日本と韓国の未来のために




良好だった日韓関係

あまり政治的なことは書きたくはないのですが、韓国在住者として、また韓国を扱うブログとして無視できないほど日韓関係が悪化しているこの現状に、ひとこと言わせてください。

ここ数年、日本と韓国の関係は悪くありませんでした。

日本の円がウォンに対して安かったこともあり、韓国人の海外旅行先として日本人気が高くなっていて、私の周辺でもたくさんの韓国人たちが日本旅行に行った話を聞きました。昔のように、東京や大阪、北海道、九州といったメジャーな観光地だけではなくて、上高地、四国、鳥取、鹿児島といったように行き先が多様化し、目的も温泉だけではなくて、自然だったり、建築物だったりに興味を持ってくれていくという話もよく聞くようになっていました。

一時期冷え切っていた日本語学習も再び人気が出だしていた矢先でした。

日本の韓国に対する輸出管理強化措置

7月1日、経済産業省(経産省)は、フッ化水素、レジスト、フッ化ポリイミドの韓国への輸出管理強化を発表したほか、8月2日には、韓国を「ホワイト国」から除外する政令改正を閣議決定しました。

今回の日本政府の韓国に対する輸出規制は、韓国在住者として本当に残念な決定でした。

政府がいくら後から徴用工判決に対する報復措置ではないと取り繕ったところで、見え透いています。明らかに報復措置です。

安倍首相には、三権分立が保障されている民主主義国家において、裁判所の判決は政府とは切り離されて考えるべきものという認識がないのでしょうか。

それに、元徴用工などの個人の損害賠償請求権を国家間の協定によって消滅させることはできません。これまで日本政府や日本の最高裁判所においても、日韓請求権協定によって個人の損害賠償請求権は消滅していないと解釈されてきました。

第一、徴用工問題は民間企業の被害者個人に対する賠償問題であり、政府は直接の当事者ではありません。

しかも、日本製鉄は、賠償を命じた2013年のソウル高裁判決を受けて、判決が確定すれば、これに従うという方針でした。それなのに日本政府が介入して、判決が確定しても支払わないようにさせ、事態を紛糾させました。問題を困難にさせているのは、当事者である民間企業ではなく、もっぱら日本政府だという指摘があります。

詳しくは下記の2つのソースをご参照ください:

IWJ「徴用工」「女子勤労挺身隊」訴訟に対する韓国最高裁判決に寄せて「元徴用工の韓国大法院判決に対する弁護士有志声明」呼びかけ人・弁護士 岩月浩二氏による特別寄稿! 2018.12.29

ハンギョレ新聞[寄稿]徴用工問題の解決に向けて 登録:2019-07-22 17:56宇都宮健児・元日本弁護士連合会会長 「国家間協定で個人請求権が消滅しないのは国際法における常識」

また、日本政府は韓国の戦略物資輸出統制に不安があるためにとる安全保障上の措置だと言い張りますが、米シンクタンク、科学国際安全保障研究所(ISIS)が5月23日に発表した、世界200ヵ国の戦略物資貿易管理制度(strategic trade control system)を評価して順位を付けた「危険流布指数(PPI)」を見ると、日本よりも韓国の方が優秀です。韓国は計1300点満点の897点を受け、調査対象200ヵ国のうち17位だったのに対し、日本は韓国より19位下の36位(818点)でした。(東亜日報より)

ソース:韓国の戦略物資管理は日本より優秀、米シンクタンクISISが評価(東亜日報)

 

韓国の反応と日本経済への影響

そしてこの措置が日本経済に影響がないというのは真っ赤なウソです。下のツイッターのツイートを見てもわかります。

今回の韓国の「行きません、買いません、使いません」というスローガンの日本製品不買運動は、小学生からお年寄りまで、本気で一般市民みんなが実行しています。彼らは日本政府だけでなく、ユニクロの社長の態度にも腹を立てています。日本旅行を取りやめたという話はもうあちこちでたくさん聞きました。日本製品を買わない使わないという話は小中学生、高校生の子供たちまで、すっかり浸透していて、友達同士の話題にもよく上るそうです。

日本不買リスト

ツイッターよりキャプチャ

MBCニュースによれば、7月の韓国の日本からのビールの輸入額は4,342,000ドルで、6月に比べて45.1%減少。昨年の同じ期間に比べて34.6%減少しました。 乗用車も7月の輸入額が65,739,000ドルで去年の同じ期間に比べて34.1%減少したということです。

ソース:MBCニュース’뜨거운 불매운동’…7월 日 맥주 수입액 전달보다 45% 급감

 

ここのところ韓国のニュースは日本のことでもちきりで、いまや「韓日経済戦争」という言葉も普通に使われています。この雰囲気では、残念ながらちょっとやそっとでは元通りには戻らなさそうです。

 

当の半導体材料を輸出していた日本企業も心配です。

日本のフッ化水素サプライヤーは7月4日以降、一か月たった今も、韓国の半導体企業に向けてフッ化水素を輸出できない状態にあると言います。韓国企業も困るでしょうが、これでは日本企業が困らないわけがありません。

しかも、韓国の報道を見ると、脱日本を本気ですすめていくようです。

昨日見たニュースでは、サムスン電子、SKハイニックスがフッ化水素代替テストを今月末に終えると予想していると、半導体業界関係者が言っていました。中小企業界では、核心素材・部品30個以上を国内化推進するとも言っています。政府は、中小企業の開発した技術を買い取り、大企業に技術移転させる「後払い型研究開発事業」を検討しているそうです。

この輸出規制措置の孕む重大な危険性については今日のYAHOOニュースに出ていたJBpressの記事に詳しいです。少し長いですが、読めば日本産業界が大打撃を受ける可能性があることがわかると思います。↓

日韓経済戦争勃発、世界の半導体業界に何が起きるか(JBpress)

 

韓国政府は8月5日、部品や素材、機器の国内生産を促すため今後7年間にわたって研究開発に約7兆8000億ウォン(64億8000万ドル)を投資し、日本からの輸入依存軽減を目指すと発表しました。チップやディスプレー、バッテリー、自動車などの製品に使用される100の主要部品・素材・機器の生産について「自給力」を高める計画で、今後5年間に供給を安定させることを目指すと言っています。

ソース:ニューズウィーク日本版

 

日本企業や、日本の観光産業に携わる人たちは、大切なお得意さんを失って、いったいどこに売れというのでしょう。そして、韓国も日本と同じように安全保障上の理由をたてにとって、DRAMなどを売らないと言い出したらどうするのでしょう。安倍政権は、この責任をどう取るつもりなのでしょうか。例によって例のごとく責任を取るつもりなど毛頭ないのかもしれませんが。このような、韓国のみならずブーメラン式に日本国民を苦しめる今回の輸出管理措置は本当に悪手だという気がしてなりません。

以上みてきたような理由から、私は今回の輸出規制措置は速やかに撤回するべきだと思います。

日韓の市民の反応

こんな険悪な雰囲気の中でも、救われたことがあります。それは、意外と韓国の一般市民が冷静に安倍政権と日本の一般市民を区別してくれていることです。デモのプラカードが「反安倍」であることは以前このブログの記事に書いた通りです。

韓国人に聞いても、安倍首相率いる日本政府や日本企業が許せないのであって、日本人が嫌いなわけではないといってくれます。

ソウルの中区の「NO JAPAN」の旗が撤去された理由でもこのことが言及されています。

また、韓国の反安倍デモに呼応して、日本の東京でも反安倍デモが行われています。

民間の日韓交流が次々と中止や延期となる中で、このような動きがあるというのは今までと大きく異なる点です。

 

幸い、実生活で危険を感じたりすることは全くありません。

知り合いの韓国人たちも今までと変わらず接してくれます。

ただ少し気を使わせているようなところもあるかもしれないと感じます。先日は、知り合いの方が理由もなく突然レモンの砂糖漬けをくれました。もらう理由がないと言ったら、「あげたくなったからいいの、もらって。」と。後から考えたら、韓国で暮らす私を気遣ってくれたのかもしれません。ありがたいことです。

でもやはり、外で日本語を話したりするのがはばかられる雰囲気、日本製品を買いにくい雰囲気があって、韓国在住日本人には迷惑な話です。これから日本製品はどんどん手に入りにくくなるでしょうし、日韓間に就航していた航空便もすでにどんどん減らされていっています。本当に迷惑です!安倍さんたちは私たちのことなんてきっと目に入っていないのでしょう。

 

ツイッターでは、#좋아요_일본 #좋아요_한국 というタグが出現しました。#好きです_日本 #好きです_韓国、という意味で、このタグをつけて日韓両国民がお互いへの思いをつづっています。韓国のニュースでも紹介されました。

 

 

お互いに傷つけあうようなヘイトな内容のツイッターもたくさんある中で、このようなツイートは一部ですが、それでも勇気をもって個人としての好意的な思いを表現している人がたくさんいることは、本当にうれしいし、未来に希望が持てます。

今こそ歴史問題ときちんと向き合うとき

お互い国が違えば、言葉も文化も立場も何もかも違うのだから、分かり合えないことがあるのは当たり前なのです。それでもそれを乗り越えるための平和的な努力は絶対に惜しんではいけないと私は思っています。話し合い、協議を重ねて、お互いの見解を理解しようと努力し、妥協点を探っていくのが外交ではないでしょうか。

ましてや歴史・外交問題を経済に持ち込むなどあってはならないと思います。

そういう意味でも、今回の日本政府の取った措置は、残念なのです。

 

 

 

また、なぜこの時期にというタイミングで、慰安婦をモチーフにした「平和の少女像」などが展示され、それが問題になり、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれました。ネット上ではこのことについて様々な意見が飛び交っています。この小さな少女像に対する受け止め方が、人によって大きく異なるということは、私にはとても新鮮でした。

韓国ではものすごく丁寧に学校で教える近現代史を、日本ではほとんど教えていないというのは大きな問題だと思います。韓国人に比べて日本人は知らなさすぎます。これを機会に、もっと議論をして、歴史に興味を持ち、一人一人がきちんと向き合うべき時が来ているのではないかと思います。

 

最後に、東日本大震災の時に助けの手を差し伸べてくれた韓国のことも忘れないようにしたいと思います。

今、日本人と韓国人双方の中で、何かが動き始めているという感じがします。今までのような単純な反日・嫌韓ではないからです。

困難でも、いつかきっと分かり合える日が来ると信じて。

 




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3件のフィードバック

  1. さとう より:

    とても面白い記事でした。
    日韓のニュースを欲して散々ネットサーフィンして見つけたプログです。
    マスコミではなく市民目線の記事で私の認識に変化がありました。ありがとう。

    • hanna より:

      さとう様、とても嬉しいコメントありがとうございます!
      最近忙しく、お返事が遅くなってしまったこと、お許しください。
      これからも、市民目線で率直な記事を心がけて頑張ろうと思いますので、よろしくお願いいたします。

  2. 一日本人 より:

    三権分立というのは国内で通用する概念です。
    その権利は当然国の外には及びません。
    国の外に及ぼそうとすると、戦争になります。海外に居住する邦人の財産が危うくなると邦人保護の名目のもとに戦争が始まるのは歴史が証明するところです。

    韓国の裁判所がどんな判断をしようが、それは尊重されなければなりません。ただし韓国内部で収めるのが韓国という独立国の責任です。

    韓国は第二次世界大戦の当事者でも戦勝国でもありませんが、自国民が戦争で権利を侵害されたというのであれば韓国政府が補償しなければなりません。

    それが世界中の法治国家の常識です。

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