韓国映画「82年生まれ、キム・ジヨン」82년생 김지영の感想レビュー
「82年生まれ、キム・ジヨン」82년생 김지영 KIM JI-YOUNG, BORN 1982, 2019
2016年に出版されて100万部を超えるベストセラーとなった同名小説を映画化した話題作「82年生まれ、キム・ジヨン」を韓国の映画館で見てきました。日本でも原作小説が翻訳されてひそかな韓国文学ブームの火付け役となったこの作品は、きっと近いうちに日本でも上映されることでしょう。私の大好きなドラマ「トッケビ」でトッケビ役を務めた俳優コン・ユさんが主人公の夫役で出ているのも見逃せません。彼は2枚目とは言い難いのに、泣きながら微笑んでいるような不思議な魅力を持った俳優さんだと思います。個人的には声が素敵。内容は、穏やかで温かいドラマに仕上がっていると思います。女性の支持が圧倒的な映画でもあります。
映画情報
評点(10点満点)
観覧客評点 9.22点
記者・評論家評点 6.79点
ネチズン評点 6.69点
ジャンル
ドラマ( 12歳以上観覧可)
制作国
韓国
上映時間
118分
韓国公開日
2019 .10.23
監督
キム・ドヨン 김도영
原作
小説「82年生まれ、キム・ジヨン」82년생 김지영 チョ・ナムジュ 조남주 著
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キャスト
チョン・ユミ 정유미 (キム・ジヨン지영役)
コン・ユ 공유 (デヒョン대현役)(あの名作ドラマ「トッケビ」のコン・ユです!)
累積観客数
3,536,717名(11.19 基準)
性別観覧客割合
男性24.2%
女性75.9%
あらすじ
1982年の春に生まれ
誰かの娘であり妻であり、同僚であり母として
2019年の今を生きていくジヨン(チョン・ユミ)。
時にはどこかに閉じ込められたように息苦しくもあるけれど、
夫テヒョン(コン・ユ)と愛らしい娘、
そしてしょっちゅうは会えなくても、いつでもたよれる家族がジヨンには大きな力だ。
しかし、いつからか、まるで別人になったかのように話すジヨン。
テヒョンは妻が傷つくことを恐れ、その事実を打ち明けられず
ジヨンは、このようなテヒョンにいつも 「大丈夫」と笑って見せるばかり…
誰もが知っているが誰も知らなかった
あなたと私の物語
鑑賞後記・感想レビュー
最近は制度も考え方もずいぶん変わってきたとはいえ、長い間男女差別がひどかった韓国で女性として生まれ育った30代の平凡な主婦のキム・ジヨン。彼女の日常と、過去の回想を通して、女性なら誰でもそのうちのいくつかは経験があるような女性であるが故の些細な無念さが描かれています。それらを押し殺してきたことの積み重ねが、産後鬱と憑依現象を彼女に引き起こしたようです。
キム・ジヨンが家庭や職場、日常で経てきた体験は確かに女性差別的で、私も女性の一人として彼女に十分共感はできるのですが、実際はそんなの現実でもありふれたことばかりで、しかも彼女も含めて彼女の周りの人たちはみんな押しなべていい人ばかり!悪意を持って差別をしてくる人はいません。コン・ユ演じる夫のテヒョンなどは、少し病的な彼女を優しく優しく気遣ってくれる、現実にはあり得ないような理想的な旦那様です。キム・ジヨンより上の世代の私から見ると、「こんな恵まれたぜいたくな環境でなんで病むかな?」と思ってしまったというのが本音です。
おそらくこの映画や原作小説が男性からはあまり支持されていないのは、男性には私と似たような感じ方をした人が多いせいでしょう。
レビューを読むと、その人その人の年代や立場、事情によって受け取り方や共感度が全く異なっているのが印象的です。ボロボロ涙をこぼして泣いた人や大絶賛している人がいるかと思えば、共感できる部分とできない部分があったと冷静に言っている人や、ぼろ糞にこき下ろしている人もいて、さまざまです。
しかし、一つ一つのモチーフがありふれたことだからといってそれぞれに問題がないわけではありません。ありふれているからこそ、感覚がマヒしてしまうことに警鐘を鳴らすこのような作品は貴重だと思います。決して当たり前ではなく、それで痛みを感じる人がいることを忘れてはいけないのです。この映画は、男性の皆さんには、女性が日頃どんなことに無念さや残念さを感じているのか知るいいきっかけになるのではないかと思います。
これは韓国だけの問題ではありません。韓国も日本もともに、世界の中で見ると男女格差がひどいことはよく知られている通りです。
例えば、世界経済フォーラム(World Economic Forum)が2018年12月に発表した、「The Global Gender Gap Report 2018」の中の、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)は2018年の日本の総合スコアは0.662(0が完全不平等、1が完全平等)で、順位は149か国中110位(前年は144か国中114位)、韓国は0.657で順位は115位というひどいものでした。
(出典:内閣府 男女共同参画局)
制度的に差別が禁じられても、人の内面には以前として差別的な考え方が残っていることがうかがえる日韓両国社会に生きる人、とりわけ男性に見てもらいたい映画だと思いました。
それから、韓国人男性とお付き合いしていて将来は国際結婚も考えているという女性には、韓国での一般的な暮らしや考え方を知る上で参考になるかと思います。
この映画の原作となった同名小説は、韓国でベストセラーとなり、日本でも翻訳されて話題になっています。この本は韓国でも日本でも読書会などに取り上げられることが多いようです。この本をきっかけにして、いろいろな人の考えや感じ方を共有するのもいいのではないでしょうか。
予告動画
2020年10月9日、日本公開(追記)
いよいよ日本でも2020年10月9日に公開されます!
日本語のオフィシャルサイトはこちらです。
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