新型コロナ:韓国医療崩壊は本当か?ファクトチェック
韓国の医療崩壊は真実かデマか
イタリアと韓国では感染確認診断者数がうなぎ上りに増えていました。患者が増えすぎたため病院に入れず死亡する人が出たというニュースも流れ、これを受けて日本のネットなどで、「むやみやたらにPCR検査を受けさせるから医療崩壊が起きているじゃないか!」という声が聞かれました。
え?ええー??今も韓国に滞在している者として、これは黙っていられない!
今日は韓国の医療崩壊が真実かデマかを一問一答で見ていきたいと思います。
韓国では手当たり次第にPCR検査をしているのか
NOです。各段階ごとに検査基準は変化してきていますが、手当たり次第にしているわけではありません。クラスター感染が憂慮される集団、例えば新天地信者集団やソウルのコールセンター関係者などには個別に連絡し全数調査を行った上、症状のある人から検査を施しています。一番初めに集団感染が明らかになった新天地イエス教の信者数と感染確定診断者数がとにかく多かったために、それが一段落するまでの間すごい勢いで感染確定診断者が増えたのです。
一般の人の場合は自分が感染しているかもしれないと思った場合、病院には行かず、まず電話で相談センターや地域の保健所に連絡し、問診を受けてそこの指示に従うことになっています。電話問診では症状や期間のほかに感染者との接触が疑われる場所への出入りや海外出国歴などが確認され、疑わしい場合は相談員が医者に判断を回します。検査の必要があると判断された場合にのみ、PCR検査を受けに保健所や選別診断所に行き、そうでない場合は様子を見るか一般の外来を受けます。外来診療をした医者がやはり疑わしいと判断した場合もPCR検査を受けます。これらの場合検査費用は無料です。医者も必要ないと診断しているのに本人が受けたいと思えば、本人負担(16万ウォン=約15000円)でPCR検査を受けることになります。その場合もし陽性なら検査費用は無料になります。
韓国では病床不足で死者が続出しているのか
大規模なクラスター感染のせいで感染者が集中している大邱(テグ)市で、2月末から3月初めにかけて、病床不足のせいで自宅隔離中に亡くなるというケースが5件ほどありました。これを見て政府は3月2日から症状で重症・中症・軽症に患者を分けて、重症・中症患者を優先的に病院に入院させるようにし、軽症患者については自宅待機または生活治療センターという感染拡大を防ぐ隔離のための施設に入れるよう、対処方法を変更したため、その後はそういうケースはありません。生活治療センターは普通の宿泊施設で、公的施設のほかにサムスンやLGなども研修院、寄宿舎、休養施設などを軽症患者の生活治療センター用に提供しています。
3月2日の時点では大邱市の患者総数は 3081名で、うち 66%にあたる2031名が自宅待機となっていましたが、10日後の3月12日には大邱市の患者総数は 5867名で、 うち2399名(41%)が病院で入院治療中、2276名(39%)が生活治療センターに入所中で、自宅待機は892名と激減しています。
マスクは手に入らないのか
3月に入って徐々に手に入るようになってきました。
2月には確かにマスクは手に入りにくい状態が続いていました。しかしマスクの増産と輸出規制などにより、2月末、まず大邱市などから出回り始め、3月1日からはほぼ全国的に農協や郵便局などで販売を開始しました。しかし、数量限定でものすごい行列になるなどしたため、3月第2週からは出生年の末尾の数字で購入できる曜日を定め、月曜日は1,6、火曜日は2,7、水曜日は3,8、木曜日は4,9、金曜日は5,0、土日は平日に買えなかった人が購入できることとし、薬局などに身分証(外国人の場合は外国人登録証と保険証)を持参して一人当たり週に2枚まで購入できるようになりました。KF94のマスクが1枚当たり1500ウォン(約140円)です。スマホで検索すると、周辺の薬局の位置とマスク残数、入荷時刻などが地図上に表示されるので、入荷を確認してから買いに行くことができ、便利です。それでも行列はできますが、以前に比べればかなり短いですし、購入できる可能性も高いです。
日用品の買い占めは起こっているか
Noです。まったく起こっていません。日本やイタリアなどでトイレットペーパーやティッシュペーパー、生理用品などの買い占め騒ぎが起きたとニュースで聞いて、理解不能と首をかしげるばかりでした。
患者は増加の一途で収拾がつかなくなっているのか
Noです。毎日何百人単位で増加の一途をたどっていた2月とは打って変わって、3月には増加数がどんどん減少傾向になっています。しかし3月11日ごろになってソウルのコールセンターで100人を超えるクラスター感染が明らかになるなど、まだまだ予断を許さない状況は続いています。
武漢やイタリアのように封鎖している都市はあるか
ありません。当初から大邱市の人にはできるだけ自宅から出ないようにとは要請がありましたが、都市を封鎖するような事態は今まで一度も起こっていません。
新型コロナウイルス診断キットの信頼性はひくいのか
日本で新型コロナウイルスの検査拡充を求める声に必ず帰ってくる反論の一つに、「偽陽性や偽陰性が出るから意味がない」というものがあります。本当でしょうか。
いいえ。細かい説明は省きますが、韓国の診断キットは98%の正確度です。検査するときは上気道(鼻、口、気道)と下気道(痰)それぞれから検体を採取し、2つの結果が一致しないときは数日後再検査を行います。その間も自宅隔離を行います。もし結果が陰性でも、2週間は自宅で観察となります。
韓国の新型コロナウイルス感染者数・死亡者数・検査総数
(3月13日0時基準)
感染確定診断者 7979人
隔離解除 510人
隔離中 7402人
死亡 67人
検査総数 248647人
結論
ここまで見てきてくださった方ならもうお判りでしょう。韓国は医療崩壊は起こしていません。市民も至って冷静です。
新型コロナウイルスは感染しやすくてもその大部分は軽症です。そのため新たに感染者を増やさないよう隔離する必要はあっても、全員を病院に入院させる必要はありません。だから、検査をして、感染しているかどうかを知ることは、感染を広めないという意味でとても有意義であると同時に、自宅隔離も可能なため医療崩壊に直結するわけではないのです。
日本でPCR検査をしてもらえず困っている人が多いと聞いて、ソフトバンクグループの孫正義氏が3月11日夕方にtwitterでこのような発言をしました。もちろん善意からです。
新型コロナウイルスに不安のある方々に、簡易PCR検査の機会を無償で提供したい。まずは100万人分。申込方法等、これから準備。#コロナ検査有志
— 孫正義 (@masason) March 11, 2020
すると、信じられないことにものすごい数の批判ツイートが押し寄せたのです。まだ何も具体的なことを発表していないのにです。
その大部分は、医療崩壊を危惧するものでした。いやいや、熱が出て肺炎でも4日間も病院に行けない日本の現状のほうが医療崩壊に近いですよ…。3月7日に山梨県で新型コロナウイルス性髄膜炎で倒れていた20代男性の例などはもう殺人未遂に近いでしょう。
ともかく大量の予想外の批判を受けて孫氏は同日8時半ごろには次のようにツイートしています。
検査したくても検査してもらえない人が多数いると聞いて発案したけど、評判悪いから、やめようかなぁ。。。
— 孫正義 (@masason) March 11, 2020
私と同じく検査しても医療崩壊にはつながらない、反対する人が理解できないと主張している人もいましたが、結局は検査の代わりにマスクを寄付することになったようです。
やりましょう。
マスク100万枚寄付します。
介護施設と開業医へ。
調達の為の発注完了。 https://t.co/vqq0jBeAvm— 孫正義 (@masason) March 12, 2020
私は マスクよりも検査のほうが絶対いいと思うのですが…。WHO(世界保健機関)で緊急事態対応を統括するライアン氏も28日の記者会見で「マスクをしていないからといって、感染の可能性が必ずしも上がるわけではない」とおっしゃっていましたし。
感染者が確認されないとウイルスがどんどん拡散されて、お年寄りや持病のある人など免疫力のない人は命を落としていくことになるのですから、検査をするかしないかは命にかかわる問題なのです。そういう人やその家族はどれほど怖い思いをしているかと想像するといたたまれません。
それともこれは人口削減計画の一環なのでしょうか。そう考えるとしっくり来てしまいそうで恐ろしいです。
もしかしたら、PCR検査に反対している人は、感染者数が増えて東京オリンピックができなくなることを恐れているのかもしれませんね。
日本は3月11日にまたWHOに4600万ドル(約46億円)も拠出したようです。私はツイッターでこのことを知りましたが、それを日本語の大手のニュースで探しても出てきませんでした。日本国民には秘密なのでしょうか?
I am grateful to #Japan 🇯🇵 for its strong support to the global #COVID19 response, including its US$46m contribution to @WHO‘s efforts in support of affected countries. Thank you Ambassador Kazuyuki Yamazaki and @MofaJapan_en for their commitment to protecting people’s health. pic.twitter.com/fTHg0dAwyX
— Tedros Adhanom Ghebreyesus (@DrTedros) March 10, 2020
WHOには日本は2月6日にも1000万ドル(約10億円)寄付したばかりです。そんなしょっちゅう大金を寄付するよりは、国内のコロナ感染予防の減圧病床拡充や診断キットと人員の確保、落ち込んだ経済で苦しむ人々の救済策、または治療薬やワクチンの開発などにもっとお金をかけるべきではないでしょうか。
Thank you #Japan for your timely, generous $10 million contribution to the international #2019nCoV outbreak response led by @WHO. The funds will support countries with weak health systems as they prepare for the potential spread of the virus. Together, for a safer world. #EB146
— Tedros Adhanom Ghebreyesus (@DrTedros) February 6, 2020
2月6日に寄付した時は、加藤厚労相が7日の会見で、クルーズ船ダイアモンド・プリンセス号での感染者数を日本の感染者数に含めないでほしいとWHOに提案したと堂々と説明していましたね。その結果、WHOがそれまで「日本」に計上していたクルーズ船の感染者は、2月6日から「その他」に分類されるようになったわけです。
では今回の多額の寄付は開催が危ぶまれる東京オリンピックを予定通り開催できるように頼んだ、つまり圧力をかけた、ということでしょうか。金額が大きいのは、IOCにも働きかけてもらうため?勘ぐってしまいますね。
3月11日にはWHOのテドロス事務局長が「新型コロナウイルスはパンデミックと言える」と述べて世界的な大流行になっているとの認識を示しました。(寄付との前後関係が気になります。)それがニュースになった12日にギリシャのオリンピアでは観客を入れないで聖火の採火式が行われました。IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は「大会の成功に向けて準備している」としながらも、「WHOの助言に従う」としています。
東京オリンピックは果たして予定通り開催できるのでしょうかね?
日本で検査をあまりしていないことやそのせいで政府発表の感染者数に信頼性がないことはもう世界中で報道されていてばれていますヨ。
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