日本は二重国籍(複数国籍)を認めているのか? - True Vine

日本は二重国籍(複数国籍)を認めているのか?

複数国籍(多重国籍)について考える




世界のグローバル化

2000年代に入ってインターネットが爆発的に普及しスマートフォンでどこからでもネットにつながることができるようになって世界のグローバル化はますます進みました。

数多くのグローバル企業が世界経済を動かし、ヨーロッパが一つになり、それ以外の国々でもノービザで行き来できる国が増えたり、関税を撤廃したり、また交通機関の発達とLCCなどの格安航空会社の出現により、国際結婚も増加し、国境の壁はどんどん低くなる一方です。

 

世界で活躍する人材と国籍選択

こんな世の中ですから、世界を舞台に活躍する国際的な人たちも全く特別ではなくなりました。

最近ではテニスで4大大会を制した大坂なおみ選手が、日本とアメリカの二重国籍を保持していることが話題になっていましたね。

また、つい先ごろ他界されたドナルド・キーン氏が311を機に日本に帰化されたこともニュースになっていました。

2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏は、長崎生まれですが、家族でイギリスに移住1983年イギリスに帰化しています。

2008年にノーベル物理学賞を受賞した南部陽一郎氏は福井県出身ですが、49歳でアメリカ国籍を取得した際に日本国籍を喪失されました。

2014年にノーベル物理学賞を受賞した中村修二氏も愛媛県出身ですが、アメリカで研究を続けるためアメリカ国籍を取得されました。

このように、国際的に活躍する人の中には2つ以上の国にルーツを持ったり、関わったりしている人が少なからず存在します。

生まれながら二重国籍になる場合の国籍取得の主な形式

そもそも国籍はどのように取得しているのでしょう。

国籍を付与する要件は国によって異なっていますが、大きく分けて日本や韓国、中国、イタリア、ノルウェー、フィンランドのように両親のどちらかが自国民であれば子も自国民と認めるという方法と、アメリカやカナダ、ブラジル、アルゼンチンのように自国の領域内で生まれた子は親の国籍に関係なく自国民とするという方法があり、前者を血統主義、後者を出生地主義と呼びます。これ以外に、原則的に血統主義であるが、例外的に出生地主義を認めるイギリス、ドイツ、ロシア、フランス、オーストラリア、オランダなどがあります。

ですから、例えば日本人と韓国人の夫婦がアメリカで出産すると、生まれてきた子には日本と韓国とアメリカの3つの国籍が取得できるわけです。

余談ですが、一時期この出生地主義を利用して韓国の富裕層がこぞって子供にアメリカ国籍を取得させるためにアメリカに出産に行くという「遠征出産」が流行しました。韓国はすべての韓国民男子に兵役の義務が課せられるので将来のその兵役逃れのためです。さすがにそれはずるいということで問題になりました。

現実から乖離している「国籍唯一の原則」の非情さ

日本と韓国のパスポート

例えば、両親が国際結婚をして、出生と同時に二重国籍になったとしても、今の日本の国籍法では22歳までにどちらかを選ぶ(*2022年4月1日以降は20歳までに変更)ように定めています。(下記国籍法参照)日本の国籍法が「国籍唯一の原則」に則っているためです。

(*追記:法務省ホームページより抜粋)令和4年(2022年)4月1日に,国籍の選択をすべき期限が変更されます。

 成年年齢の引き下げ等を内容とする「民法の一部を改正する法律」の成立を受け,国籍法についても改正が行われました。国籍の選択をすべき期限については次のとおり変更され,令和4年(2022年)4月1日に施行されます。

・18歳に達する以前に重国籍となった場合→20歳に達するまで
・18歳に達した後に重国籍となった場合→重国籍となった時から2年以内

※ただし,令和4(2022)年4月1日時点で20歳以上の重国籍者については,22歳に達するまでに(20歳に達した後に重国籍になった場合は,重国籍になった時から2年以内に)どちらかの国籍を選択すれば足り,令和4(2022)年4月1日時点で18歳以上20歳未満の重国籍者については,同日から2年以内にどちらかの国籍を選択すれば足ります。
※以上の期限を徒過してしまった場合であっても,いずれかの国籍を選択する必要があります。

しかし、人にとって父と母どちらも同じように大切で選べないのと同様、国際結婚家庭の子どもにとって父親の国と母親の国はどちらも大切です。それぞれの国に祖父母や親せきがいるのが普通で、両方の文化的背景をもっています。それをどちらかを強制的に捨てさせるのはあまりに非情ではありませんか。

本人の意思に反して国が国籍をはく奪するのは人権侵害に当たるという考え方がグローバルスタンダードになってきているということはぜひ知っておくべきです。

仕事や進学の都合でやむなく外国籍を取得する人たち

仕事で

外国籍の取得は本人たちが好きでするものだとは限りません。

外国で働いていると、仕事のためにやむなく外国籍を取らなければならないことがあります。

例えば外国で働く研究者が、外国の政府の補助金を受けるために国籍を取得せざるを得ない場合もあります。

日本国籍取得のためモンゴル国籍の離脱申請をしたとニュースになっていた白鵬は離脱したくて申請したのでしょうか?おそらく親方になるためではないでしょうか。

進学で

子どもでも同じです。

外国で生まれ育った二重国籍の子どもが日本の大学に進学したいと思っても、日本の、特に国立大学は二重国籍者には留学生としての受験・入学を許していません。かといって帰国子女枠が充実しているのかというとそうでもなく、帰国子女入試自体を行っていない大学や学部も多数あります。

つまり、外国で生まれ育った二重国籍の子どもも一般入試や自己推薦、AO入試などで日本国内の子どもと同じ土俵で戦うか、日本国籍を捨てて留学生入試で入るかの選択を迫られるわけです。

日本で教育を受けていて、ほんの2,3年海外に行ってたという帰国生ならいざ知らず、生まれてこの方日本で教育を受けたことがなく日本語もままならない子供の場合は日本の一般学生に太刀打ちできるわけもないため、日本に行きたいと思う日本びいきな二重国籍子女ほど日本国籍を捨てて外国籍を選択しなければならないというジレンマに陥るわけです。

国際社会から取り残されている日本

日本は原則的に重国籍を認めていませんが、これは世界的に見ると今や少数派となりました。複数国籍(重国籍)を認める国は1960年にはわずか39%に過ぎなかったのですが、2015年には73%、142か国になったのです(2018年9月30日付東京新聞参照)。認めていないのは、日本の他に共産主義の中国と、独裁政治のシンガポールなど、先進国ではごくわずかです。こんなところでも日本のガラパゴス化が起こっていると言えます。

韓国も2010年から複数国籍保有可能に

隣国韓国の場合も、日本国内ではあまり知られていませんが、2010年に法改正が行われ、「外国国籍不行使の誓約」というものを行えば外国籍を放棄しなくてもよく、複数国籍が認められるようになりました。「外国国籍不行使の誓約」とは、大韓民国で外国国籍を行使しないという意思を法務部長官に誓約するものです。

(注意)外国国籍不行使誓約は、韓国国籍を選択して行うものであり、国籍選択申告具備書類を法務部に提出しなければならず、遠征出産者の子女ではないことを立証する書類も提出しなければなりません。

日本の国籍法の規定は憲法違反か

このように、日本のように民主国家なのにも関わらず二重国籍を禁じている国はまれで時代遅れなのです。

そんな中で、スイスなど海外に住む男性ら8人が去年、日本人に生まれても、外国籍を取得すれば日本国籍を失うとする日本の国籍法の規定は憲法違反だとして、日本政府を相手取って提訴中です。(2018年12月24日付AFP通信

参考に、スイスに住む15歳以上の人の約17%が二重国籍者で、最も多いジュネーブ州では45%と住民の約半数が重国籍者だそうです。

日本国籍を選択しても離脱してもいばらの道

重国籍者が、日本の国籍法に従って22歳になる前にもしも外国籍を選択して日本国籍を放棄したとしても、心無い日本人からはきっと日本を捨てた裏切り者という刻印が押されるであろうことは目に見えています。

かといって、日本国籍を選べば安泰かと言えば、いつまで経ってもハーフだの混血だのと言われ、自称「純粋な」日本人から差別を受ける可能性がずっとついて回ります。どちらにしてもいばらの道です。

実質的には認められているも同然な二重国籍

しかし、最近になって、私の認識は間違っていたということを知りました。日本で二重国籍は合法的だったというのです!!!

2019年04月10日(水)ニューズウィーク日本版で「大坂なおみ選手の二重国籍が認められた!」という見出しでパックン(パトリック・ハーラン氏)がコラムを書いています。

この中でパックンは二重国籍を考えるときは、4つのパターンに分けると分かりやすいとし、以下のように分類しています。

1つ目:日本人が意図的に外国籍を取得したケース。

2つ目:日本人が国際結婚などで自動的に相手の国の国籍を得た場合。

3つ目:外国人が日本国籍に帰化したとき。

4つ目:国際結婚の子供など、未成年のうちに複数の国籍を持つケース。

そして、1つ目を除く下の3つのケースではすべて「どのケースでも二重国籍は認められる」と結論付けています。「選択宣言」で日本の国籍を選んだ時点で法的な義務は果たされることになり、他国籍を持ったままでも問題はないのだそうです。

そして、その後「外国籍の離脱に努める」ことが規定となっていますが、それに伴うチェック機能もなければ、離脱に努めていないときの罰則もなにもなく、暗黙の了解となっているのだそうです。

なぜそうなるのか。まず、世界にはアルゼンチンやブラジルのように、自国の国籍を離脱することを認めていないか事実上困難な国が存在するためです。このような国の国籍を持った人が日本に帰化した場合、二重国籍を解消するすべがありません。だから、それ以外の国の人にだけ国籍離脱を要求するのは不平等なのです。

今までこういうわけでサッカーワールドカップでは日本チームは多くの二重国籍者に助けられてきました。

過去にはペルーのフジモリ元大統領は二重国籍だったため日本に亡命したさいに日本が保護し、日本で選挙にも出馬したという例もあります。それでも特に問題にはされませんでした。

 

まずは実態に即した法改正を

それなら、今の歯切れの悪いわかりにくい法律(下記参照)をもっと時代の流れにあっていてわかりやすいものに改正するべきです。たとえ条件付きであっても複数国籍(多重国籍)を認めると明文化するべきだと私は思います。

 

法務省・国籍法より抜粋

 (国籍の喪失)

第十一条 日本国民は、自己の志望によつて外国の国籍を取得したときは、日
本の国籍を失う。
2 外国の国籍を有する日本国民は、その外国の法令によりその国の国籍を選
択したときは、日本の国籍を失う。
第十二条 出生により外国の国籍を取得した日本国民で国外で生まれたもの
は、戸籍法(昭和二十二年法律第二百二十四号)の定めるところにより日本
の国籍を留保する意思を表示しなければ、その出生の時にさかのぼつて日本
の国籍を失う。
第十三条 外国の国籍を有する日本国民は、法務大臣に届け出ることによつて、
日本の国籍を離脱することができる。
2 前項の規定による届出をした者は、その届出の時に日本の国籍を失う。

 (国籍の選択)

第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有すること
となつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、そ
の時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国
籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の
定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨
の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。
第十五条 法務大臣は、外国の国籍を有する日本国民で前条第一項に定める期
限内に日本の国籍の選択をしないものに対して、書面により、国籍の選択を
すべきことを催告することができる。





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