モカ・マタリで有名なイエメン産コーヒーの特徴、産地~ギシルコーヒーとは?
エチオピアはコーヒーを見つけたとされる山羊飼いカルディの伝説で有名ですが、イエメンは修行者オマールが実をついばむ小鳥によってコーヒーを見つけた伝説で有名ですね!(ご存じない方はこの記事の最後のリンクから辿って読んでみてください)コーヒー栽培に関してはとても古い歴史を持つイエメン、また、モカ港から出荷されることからモカの名前で呼ばれるモカ・マタリも有名な、イエメンのコーヒーについて調べました。
イエメン産コーヒーの基本データ
世界の生産量に占める割合:0.1%
生産量:世界第30位(1万9千トン/2017年)
主な種:アラビカ種100%、ロブスタ種0%
主な品種:ティピカ、エアルーム、ブルボン
収穫期: 6月~12月
生産処理:ナチュラル
イエメン産コーヒーの生産形態と特徴
アラビア半島の最南端に位置するイエメンでは、、アフリカ大陸以外の他の国にコーヒーが伝播するはるか昔にコーヒー栽培を開始し、モカという港町を通して商業目的のコーヒー輸出が初めて確立されました。標高1000~2000mの西部の山岳地帯と、中部の高原地帯でコーヒーの栽培がおこなわれています。とりわけ、西部のバニー・マタル地区でとれるモカマタリが有名です。1628年にオランダが輸入して以来長年にわたりヨーロッパで人気を博してきました。
紅海を挟んだ対岸のエチオピアにもイエメンと同じくモカという名前のコーヒーの銘柄があるのは、かつて、エチオピア産とイエメン産の豆が混ざった状態でこのイエメンのモカ港から輸出されていたためです。現在はそれぞれの銘柄で販売されることも多く、エチオピア産はモカ・シダモや、モカ・ハラー、イエメン産はモカ・マタリがよく知られています。
栽培や精算処理の方法は800年間変わっておらず、農薬の使用は稀です。水が不足しているため処理はナチュラルで、豆が不ぞろいなこともあります。
ギシルコーヒー(Gishir)
イエメンにはコーヒー豆の皮殻を煎ってジンジャーやシナモンと砂糖を加えて煮だしたギシルという飲み物があります。豆のほとんどが輸出されるため、皮殻を利用した飲料が生まれたそうです。
イエメンのコーヒーの格付け方法
イエメンでは全体的な格付け基準は存在せず、産地によって区別します。産地ではバニー・マタル地区産が最も等級が上とされており、地区内部では等級分けが存在します。No.9が最高で、等級が下がると数字が小さくなります。
モカ・マタリ
特徴:芳醇な香り、独特のフルーティな酸味、柔らかな苦味。
焙煎度:中煎り~深中煎り(ミディアムロースト~ハイロースト)
楽しみ方:ストレート、カフェ・オ・レ、アイスコーヒー
イエメンのコーヒーの主な生産地区
西部に集中しています。
マタリ
サナアの西、フダイダ港に向かう途中の高地地域です。比較的酸味が強いです。
イスマイリ
フタイブ周辺に定着したイスラム教徒にちなんで名づけられました。銘柄名も同じです。素朴な味わいです。
ハラズィ
サナアと海岸の中間地点です。ジャバル・ハラズ山脈に広がる農園で採れるコーヒーは複雑でフルーツやワインを思わせるイエメンらしい風味です。
ザマール県
サナアの南に位置する県です。典型的なイエメン産の特徴を持ちながらよりソフトで丸みがあります。
参考文献
『コーヒーの基礎知識バリスタテクニック・100のレシピCOFFEE BOOK』Anette Moldvaer著 誠文堂新光社
『知れば知るほどおいしく飲めるコーヒー辞典』藤田政雄著 日本文芸社
『極める愉しむ珈琲辞典』西東社
♥電子書籍版のご購入はこちら
【おすすめの記事】
オマールの伝説~もう一つのコーヒーの起源~と、コーヒーの伝播