韓国の新大統領は野党の尹錫悅氏!公約は?
韓国の第20代大統領選挙、当選したのは誰?
韓国大統領選挙の投票率
2022年3月9日(水)、韓国で第20代大統領選挙が行われました。
韓国では選挙はいつも平日を公休日にして行われます。
3月4日、5日に行われた事前投票(期日前投票)だけでも投票率が36.9%と過去最高だったので、今回も投票率が高いのかと思ったら、本選挙はそれほどでもなく77.1%でした。
もちろん日本に比べたら格段に高いのですが、韓国のこれまでの投票率に比べるとまあ普通といったところです。
韓国歴代大統領選挙の投票率推移
1987年 13代大統領選挙 89.2%(盧泰愚)
1992年 14代大統領選挙 81.9%(金泳三)
1997年 15代大統領選挙 80.7%(金大中)
2002年 16代大統領選挙 70.8%(廬武鉉)
2007年 17代大統領選挙 63.0%(李明博)
2012年 18代大統領選挙 75.8%(朴槿恵)
2017年 19代大統領選挙 77.2%(文在寅)
2022年 20代大統領選挙 77.1%(尹錫悅)
韓国大統領選挙各候補の得票率は?
今回の大統領選挙は「超薄氷勝負」と表現されるほどのこれまでにない大接戦でした。
95%以上開票してもまだ決着がつかず、結局午前4時近くになって開票率97.3%の時点で、与党・李在明(イ・ジェミョン)候補が敗北を認める挨拶をして、保守系野党の尹錫悦候補の当選が決まりました。
各候補者の得票率
尹錫悦 윤석열(国民の力)48.56%(16,394,815票)
李在明 이재명(共に民主党)47.83%(16,147,738票)
沈相奵 심상정(正義党)2.4%(803,358票)
以下1%以下のため省略します。
地域・世代・男女別の投票傾向
尹錫悦氏と李在明氏の差がわずか0.73%!票数にして247,077票の差でした。
毎度のことながら、湖南(ホナム)地方(全羅道)は革新系の「共に民主党」支持、嶺南(ヨンナム)地方(慶尚道)は保守系の「国民の力」支持と地域差がかなり出ています。
尹錫悦氏についてみると、テグ市では75.1%、慶尚北道では72.8%も得票していますが、全羅南道ではわずか11.4%、光州市では12.7%、全羅北道では14.4%しか得票できていません。
また、今回は公約の違いのせいで若年層で男女差が大きかったようです。
若い女性は李在明氏を、若い男性は尹錫悦氏を選んだ人が多かったです。
20代以下の男性では尹錫悦氏が58.7%、李在明氏は36.3%でしたが、20代以下女性では李在明氏が58%、尹錫悦氏は33.8%でした。
また、高齢者は尹錫悦氏支持が明らかに多くなっていました。
多かった無効票
今回の選挙は、25年ぶりに無効票が多かったといいます。
無効票の数はなんと30万票!
実に尹錫悦氏と李在明氏の得票差の24万7千票よりも多かったわけです。
実際私の周辺でもあちこちで聞かれたのは投票したい人がいないという言葉です。
投票には行くが無効票を投じるというのは、政治に関心がないわけではないが投票したい人がいないという人々の意思表示でしょう。
与党も野党もこのような韓国国民からの無言のメッセージの意味をよく考えて、気を引き締めて国政に当たってもらいたいです。
保守系野党の尹錫悦候補が当選
尹錫悦の名前の読み方
めでたく韓国の新大統領にえらばれた尹錫悦氏ですが、名前は何と呼ぶのでしょうか。
実は仮名で表現するのが悩ましい名前で、今のところに日本の新聞やニュースを見ていても各媒体ごとにばらつきがあります。
ハングルで書くと윤석열で、苗字はユン、名前一文字一文字はソクとヨルです。
英語記事ではYoon Suk-yeolと表記されています。
なので、ユン・ソクヨルと書いてある場合もあります。
しかし韓国語ではパッチムㄱ【k】の後に母音や半母音が来ると連音化、有声音化が起こることが多く、そのように読めばユン・ソギョルとなり、こう発音している人もいますし、こう書かれている日本語記事もあります。
(過去記事参照:【韓国語の発音】パッチムの読み方①連音化)
ところが、韓国のニュースなどで現地の人々の発音を聞くと、そうは発音していない場合が多いです。
ではどう言っているのかというと、ユン・ソンヨルと書くのが一番近いような発音です。
実際こう書いてある日本語記事もあります。
パッチムㄱ【k】の後に鼻音のㄴ【n】,ㅁ【m】が来ると、ㄱ【k】は鼻音化して【ŋ】と発音するという規則があります。
「ヨル」の頭にくる子音ㅇを、元来【ŋ】の音を持つ鼻音と認識して、この規則が適用されているようです。
昨日の記事ではどう書くか迷ってユン・ソンギョルと書きましたが、これからどう書くかまだ悩み中です。なので今日のところは漢字表記で行きます。
今後日本のメディアがどの表記に落ち着くのか、見てから決めたいと思います。
どんな人?
尹錫悦氏は政治経験は全くない元検事総長です。
1960年ソウルに大学教授の息子として生まれ、1979年にソウル大法学部に入学、9浪した末、司法試験に合格し検事になりました。
朴槿恵前大統領への捜査を認められ、文在寅大統領に抜擢されて検事総長になりましたが、文大統領の側近で日本でも”玉ねぎ男”として有名になってしまったチョ・グク前法相の不正疑惑を徹底的に追求しました。
これにより有名にはなりましたが、文政権と対立することになりました。
もとから政党「国民の力」に所属していたわけではなく、大統領候補として人気が高まったため「国民の力」に合流。
公正さを売りにしていますが、選挙戦を行う中で妻のキム・ゴニ(ゴンヒ)氏の経歴詐称や株価の不正操作疑惑が出てきたりもしています。
彼女は今回夫が当選してくれて心底庵安堵していることでしょう。
任期はいつからいつまで?
韓国の大統領の任期は5年で再選はありません。
現大統領のムン・ジェイン氏の任期は2022年5月9日までで、5月10日に新大統領となる尹錫悦氏の就任式が行われます。
任期は2027年5月9日までです。
公約・政策は?
選挙に当たり、各候補が10大公約を掲げています。
尹錫悦氏の公約は以下のようなものです。(一部省略)
ただし、韓国の国会は300議席のうち6割以上の172議席が「共に民主党」で、「国民の力」は110議席しかなく、実際どの程度実現できるのかはわかりません。
厳しい国政運営が迫られそうですね。
尹錫悦氏の10大公約
コロナ19克服
- 大統領直属コロナ緊急救助特別本部設置
- コロナ被害損失補償
- コロナワクチン副反応被害回復国家責任制
成長と福祉
- 雇用創出
- 国民基礎生活保障拡大
- 社会的弱者を対象としていた緊急福祉支援制度を全国民を対象とした国民安心支援制度に拡大
公正と常識の回復
- 不正入試、不正入社根絶
- 入試制度単純化、定試(チョンシ)比率拡大
- 住宅250万戸以上供給
- 2022年住宅公示価格を2020年水準に還元
- 総合不動産税と財産税の統合推進
- 譲渡所得税改編、取得税負担緩和
生活
- 必須医療国家責任制
- 乳幼児無償給食
- 父母給与導入
- 母子・父子家庭支援
- 児童虐待根絶のためのシステム構築
- 基礎年金月10万ウォン以上
- 障がい者の移動権強化、雇用機会拡大、芸術活動支援強化
- ペット治療費負担軽減、保護体系整備
外交・安保
- 米韓同盟再建と包括的戦略同盟強化
- 経済安保外交積極化
- AI科学技術強国育成
- 北の核ミサイル対応体系構築
- 北朝鮮の完全な非核化と南北関係正常化
- 国家有功者手当引き上げ
- 未来志向的日韓関係
科学技術
- 小中高校にAI補助教師導入
- 大統領直属の民官科学技術委員会新設
- 国家長期研究事業制度新設
- 100万デジタル人材養成
- デジタルインフラとサイバーセキュリティー網構築
環境
- PM2.5低減
- クリーンエネルギーの安定的供給と拡大
- 異常気象災害対応体系整備
- 温室効果ガス低減
- 次世代の原子力発電技術開発と原発輸出、10万人雇用創出
治安・安全
- 災害安全管理体系構築
- 食品安全強化
- 歩行者中心の交通体系
- 性犯罪、虚偽告訴罪処罰強化
- セクハラ性犯罪根絶
- 少年犯罪、酒酔い犯罪処罰現実化
発展
- 先端未来産業育成
- 中部圏新産業ベルト構築
- 新空港早期建設、交通網拡充
- 海洋産業育成、グローバル港湾へ
- 東西連結交通網構築
- 首都圏広域交通網(2期GTXなど)
政府革新
- 大統領執務室移転、青瓦台は国民へ
- 大統領秘書室縮小
- 大統領第2執務室世宗市に設置
- デジタルプラットフォーム政府具現
今後の日韓関係は?
ユン氏は「未来志向的な日韓関係を作ります!」とおっしゃっていますが果たしてどうなるでしょう?
色々な問題に対しては、お互い問題を整理して知恵を出し合って解決に取り組む必要があるといっています。
少なくとも最悪と言われる今の日韓関係よりは改善することを期待してみたいと思います。
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