韓国の学校給食の写真公開!オーガニックの無償給食に?!
韓国の学校給食はどうなっているの?
給食は、多くの子どもにとって学校に行く楽しみの一つではないでしょうか。韓国の学校も広く学校給食を実施しています。今日は韓国の学校給食とはどのようなものか、紹介します。
韓国の一般的な学校給食の例
韓国の一般的な給食はシッパン(식판 食板)という一枚のプレートにへこみをつけた食器に盛りつけます。普通、手前の左側の大きいくぼみはご飯、手前の右側の大きいくぼみは汁物を盛りつけ、奥に3~4か所ある小さなくぼみはおかずを盛りつけます。基本的にこの形は幼稚園などから大学まで、すべて同じです。
幼稚園やオリニチプ(어린이집 直訳すると「子供の家」。保育園のようなもの)などでは、トシラクトン(도시락통 弁当箱)と呼ばれる蓋つきの空のシッパン(食板)を家で洗って持たせると、調理した温かい食品を園で配膳してくれるというスタイルです。
日本同様米が主食の国韓国ですから、主食はご飯が圧倒的に多く、豆、麦、稗、粟、黒米といった雑穀ご飯や、菜飯などでバリエーションがつけられています。たまに麺類などもあります。パンはあまり見かけたことがありません。韓国では小麦粉で作られた食品はあまり体に良くないと一般的に思われているのでそのせいかもしれません。
私の知っている範囲では、学校給食は現在は学校長の責任で運営されています。大抵の学校は調理室を備えていて、学校専属の栄養教師(栄養士)が常勤していて、栄養士の組んだ献立を各学校の調理室で毎日調理しています。各学級から数人ずつ日替わりで保護者による食材と調理器具、給食室の衛生管理などの検査も行われています。食べてみることもできる場合もあります。
韓国も昔はお弁当でしたが、それが90年代には委託給食となり、2006年に大手給食委託業者が食中毒を出したことをきっかけに、現在の形に変わったそうです。
日本の学校給食と韓国の学校給食の違い
では日本の給食とどこが違うのか、具体的に見てみたいと思います。
給食を食堂で食べるか、教室で食べるか
日本では教室で給食を食べる場合が多いと思いますが、韓国では給食は食堂で食べるものです。たいていは食堂の収容人数が限られているため、低学年と高学年で給食の時間をずらしてあります。時間割もそのように組まれています。
給食を子どもが配膳するか、調理員が配膳するか
韓国の小学校では配膳も調理員の方がしてくれます。子どもは並んで順にシッパン(식판 食板)をもって移動していくと、各おかずのところに調理員の方が立って待っていて、おかずを盛りつけていってくれます。
中学になると、中学生がボランティア活動の一環として配膳します。
大学だと、食堂の入り口で食券を購入しますが、小中高と同じくシッパン(식판 食板)がある場合も多く、その場合、ご飯やおかずは自分自分で盛り付け、汁物だけは盛り付けてもらうという形式です。
盛り付けてもらうときに、少しにしてくださいとか、たくさんくださいとか言うこともできます。
配膳が終わって料理が余っている場合は大抵おかわりもできます。
牛乳選択制
韓国では牛乳はお昼ごはんの時には飲みません。午前の休み時間に小さな紙パックの牛乳を学校で飲みたい人は、あらかじめ学期の初めに注文用紙が配られるのでそれで注文した人だけが飲みます。その牛乳のメーカーも、事前アンケートの結果によって毎年変わります。
私は今では逆に、日本の学校では給食で全員必ず牛乳を飲むのことの方が不思議だと思います。食事と一緒に牛乳を飲むのは学校でだけですし、乳糖不耐症などによって牛乳を飲むとおなかを壊す子も相当数いるのですから、日本も変わってしかるべきだと思います。
高校の学校給食
日本の高校では給食が実施されてないところが多いと思います。私の学生時代もそうでしたし、現在も実家近くの高校では実施されておらず、お弁当か、数量限定の購買のパンで済ましているようです。
このことを韓国人に話すと、とても驚かれ、感心されます。「日本のお母さんは大変ね!」と。
なぜなら韓国の高校では昼ご飯のみならず晩御飯まで温かい給食があるのが当たり前だからです。韓国では高校生はなんと夜10時ごろまで学校で勉強してきます。だから晩御飯も給食があるのです。
日本のお母さんは大変?
日本では共働き世帯が増え続けています。共働き世帯数の推移のグラフを見てください。
内閣府男女共同参画白書の平成30年版を見ると、昭和55年以降、夫婦共に雇用者の共働き世帯(青いグラフ)は年々増加し、平成9年以降は共働き世帯数が男性雇用者と無業の妻から成る世帯数を上回っています。平成29年には、共働き世帯数が1188万世帯、男性雇用者と無業の妻から成る世帯数が641万世帯となっており、3世帯のうちほぼ2世帯は共働きということになります。
ところが家事・育児の分担の男女差は日本が断トツです。妻と夫の家事・育児関連に費やす時間の妻と夫のグラフを見てみましょう。(左が妻、右が夫。一番上が日本。)
同じく内閣府男女共同参画白書の平成30年版では、平成28年における6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連に費やす時間(1日当たり)は日本は83分であり、ほかの先進国と比較してかなり低水準にとどまっていることがグラフからも一目瞭然です。
安倍内閣は「一億総活躍社会」とうたって女性の社会参加を呼びかけますが、これでは女性の負担が家事に仕事までプラスされて倍になっているだけではないでしょうか。
私も経験があるのでわかりますが、毎日朝の忙しい時間にお弁当まで作るのは本当に大変です。子どもたちも冷たく冷えたお弁当のご飯より、作ってすぐに配膳される温かいご飯がいいに決まっています。日本も一部実施されている高校もあると聞いてはいますが、全面的に高校での給食が実施されればいいと私は思います。
給食の無償化
2018年の秋にソウル市は、すでにソウル市の小学校と中学校で実施している無償給食を、2021年からすべての小・中・高校で全面的に実施することにしたと発表しました。2011年に公立小学校で無償給食が始まってから10年を経てとうとう小・中・高校全体に無償給食が拡大され、1302校ある市内の小・中・高校の93万人余りの生徒が無償給食の対象になります。ソウルの無償給食関連予算は2018年基準で4533億ウォンですが、小・中・高校全体に無償給食が拡大されると年間予算は7000億ウォンが必要になる見通しだそうです。
調べたところ、最初からすんなりと無償化ができたわけではないようです。最初に無償化を導入しようとした2011年には、当時のオ・セフン(오세훈)ソウル市長と反対派が署名を集めて住民投票実施にまで至りましたが、投票率が低く、市長は結局引責辞任しています。そのような紆余曲折を経て今の全面無償化につながったわけですね。
ソウル市、いいですね!税金はアメリカのご機嫌取りの戦闘機の大量購入よりもこういうところに使ってほしいと心から思います。
韓国ではソウル市のみならず、全国で無償給食化がどんどん進み、最後まで有償給食で残っていた大邱(テグ)市の高校も2020年から順次導入されることが決まりました。
オーガニック給食
韓国ソウルの無償給食は早速2019年の新学期が始まる3月4日から、ソウル市内319校の高校3年生からまず実施され、現在8万4700人が、オーガニック無償給食の提供を受けています。そう、オーガニックなのです。子どもは大切な宝であるからこそ、いいものを食べさせたいとの思いがあるのです。
翻って日本では、福島で原発事故が起こったすぐ後から、「風評」払しょくのためのアピールとして、福島産食材を学校給食に取り入れて子どもたちに食べさせようという動きがありました。当時、保護者の反対運動もむなしく、福島産米は学校給食で使われることになったと聞いています。
子どもは宝であり未来です。私はソウル市の子どもを大切にする考え方を支持します。日本にもそうあってほしいと願うばかりです。
はやい韓国、慎重な日本
韓国に住むようになって実感する日本と韓国の大きな違いは、変化の速さです。韓国は「はやくはやく」を意味する「パリパリ(パルリパルリ)」という言葉でよく表されるようにせっかちなところがあって、いいと思ったことなどを取り入れ、行動に移すのがとても速いです。ただ、詰めが甘いまま取り入れてしまうこともままあって、途中で修正しながら形を作っていくといった感じです。
例えば大気汚染が深刻化するや否や、全国の学校の各教室にあっという間に空気清浄機が設置されたのには本当に驚きました。
以前、学校の運動場を一斉にゴムチップのウレタン敷きに変えたかと思いきや、数年たってから体に有害な物質が検出されたと言ってはまた全部土に戻したりしたときには、無駄が多いなあと若干あきれましたが、子どものことを考えてすぐに直す決定の速さには脱帽でした。
変化を好まず、慣例に従うのが好きで、石橋をたたいてたたいてたたいて渡るのが好きな日本とは対照的です。
両国の中間くらいがちょうどいいのではないかとよく思います。
韓国の伝説の栄養士の給食(おまけ)
2020年8月をもって退職されてしまいましたが、韓国の「給食界の伝説」と呼ばれる栄養士がいます。京畿道のパジュ中学校とセギョン高等学校で7年余りにわたって給食栄養士を務めたキム・ミンジ(김민지)さんです。
2016年教育部長官賞(日本でいう文部科学大臣賞のようなもの)も受賞しています。どのような給食かは彼女本人がインスタグラムにたくさん載せていました。給食の皿に不似合いな大きなロブスターやカニやエビ、ウナギなどが目を引きます。(残念ながら現在は見られないようです。)
子どもたちが学校で給食を食べる時ぐらいはストレスなく幸せでいられることを願って、その思いだけで7年間頑張ってきた。
本当に、こんな給食を出されたら、嫌なことも忘れて、少なくとも食べている時間は幸せな気分で過ごせそうです。
ロブスターやカニ、ウナギなどの高級食材を使っているので単価が気になりますが、給食費が特別高いわけではなく、他の学校と同じ水準なのだそうです。日々の給食費を少しずつ節約して、記念日や行事の日、受験の日などに特別食の日を設けているそうです。それ以外にもロブスターの輸入元へ電話を掛けたり、直接卸売市場に赴いて交渉するなど、低価格で食材をそろえる努力もしたそうです。
彼女の子どもたちへの愛情がひしひしと伝わってくるような素敵な給食、これを食べられる子供たち、うらやましいですね。
彼女の影響は韓国内の他の学校にも及んでいるようで、うちの子たちに聞いたら大きい骨付きチキンのモモ肉一本丸ごとの他に、カニやエビ、トコブシ、サムゲタン(若鶏丸ごと1羽)も出たこともあるし、いつもおばさんが「いっぱい食べな」とやたらいっぱいつけてくれるよ!多すぎる!とのことでした。ありがたいことです。
参考資料:内閣府男女共同参画白書の平成30年版
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