【韓国伝統文化】「テボルム대보름」とは?「プロム」とは?陰暦1月15日小正月の風習と食べ物について
チョンウォル テボルム(정월 대보름)とは?韓国の風習と食べ物
韓国に住んで、韓国のうらやましいと思うことの一つに、韓国ではまだ昔ながらの暦が生きているということがあげられます。
日本は1873年(明治6年)に太陽暦であるグレゴリオ暦を導入してから、年中行事の時期がずれてしまって本来の意味や季節感が過去と現在で断絶されてしまっているものがたくさんありますね。
本当に残念でもったいないことです。
太陰暦でお正月から15日後の1月15日を韓国では「チョンウォル テボルム(정월 대보름)」または「テボルム(대보름)」といいます。
(私には「テーボルム」と聞こえることが多いですが、韓国語では普通は長音は区別されません。)
チョンウォル(정월)は正月、つまり1月を意味し、テボルム(대보름)は大きい満月を意味します。
韓国の伝統節気の一つで、漢字語では「上元」と書き、「サンウォン(상원)」と読みます。
(ちなみに中元 は陰暦 7月 15日、下元は 10月15日です。道教からきています。)
韓国では新年最初の満月となるこのチョンウォルテボルムは正月と同じくらい大切に考えられてきました。日本でも松の内があるのと同じように、正月の雰囲気が15日まで続いているという感覚のようです。
今日はこの「チョンウォルテボルム(정월 대보름)」の韓国の食べ物と風習をご紹介します。
ちなみに日本では1月15日は「小正月」と呼んで、左義長やどんど焼きが行われ、小豆粥を食べる風習があります。
まだ記憶にある方も多いと思いますが、もともと成人式も1月15日でしたね。
年が明けて初めての満月である小正月に元服式を行うという意味が込められていたのに、太陽暦になって満月ではなくなり、さらにハッピーマンデーなどという制度を作って日にちすら定まらなくなってしまいました。
過去から脈々と受け継がれてきた伝統には先人の知恵が詰まっています。為政者はもっとそういう素朴で基本的な伝統に敬意をもつべきです。
テボルムはいつ?
陰暦の1月15日です。
2021年: 2月 26日 (金)
2022年: 2月 15日 (火)
2023年: 2月 5日 (日)
テボルムの食べ物
チョンウォルテボルムには、いろいろと特別な食べ物があり、数日前からスーパーやマートにこの季節ならではの食べ物が並びます。
特に目に付くのはクルミや殻付きのピーナッツなどですね。
では一つ一つ見ていきましょう。
健康的な五穀ご飯(오곡밥 オゴkパp)
五穀飯(オゴkパp)の五穀とは、小豆、大豆、モチアワ、モロコシ、もち米のことです。
これらを混ぜて混んで炊いたものを五穀飯(オゴkパp)と呼びます。
満月のイブにあたる14日の夜にたいて食べます。
我が家でも炊いて食べました。
雑穀や豆の入ったお赤飯といった感じで健康的です。
9種類のナムル(진채식 ジンチェシk)
素材の味を生かして作る韓国の和え物、ナムルはもうすっかり日本でも定着してきた感があります。
辛くなく優しい味で健康的でバラエティに富んでいてとてもおいしくて私は大好きです。
テボルムにはダイコン、キュウリ、細長いカボチャ、ユウガオの実、ナス、キノコ、ワラビ、里芋の茎などを乾かしておいたものをナムルにして食べる習慣があるそうです。
お店に行くと、ほかにもホウレンソウや豆もやし、キキョウの根やサツマイモの茎や、日本では見かけないような山菜のナムルの種類も多いです。
普段は3種類くらいを詰め合わせて売っているお惣菜屋さんが多いですが、この時期になると、9種類とか12種類とかを詰め合わせたデラックスなナムルが並びます。
これはテボルムには少なくとも9種類以上のナムルを、五穀ご飯と一緒に食べるという風習のためです。
一つ作るとなるとかなり手間暇がかかるので買ってみました。
12種類入ってこれで1万ウォン(約千円)でした。
ナッツ好きにはたまらないプロム(부럼)
チョンウォルテボルムの満月の夜が明けた朝には、プロム(부럼)という風習があります。プロムケギ(부럼깨기)ともいいます。
プロムとは、栗やクルミや松の実や銀杏、最近は落花生など、かたい殻に入った実を、歯で割って食べる風習です。
プロムはもともと「できもの」を意味するプスロム(부스럼)が語源で、ナッツを歯で割って食べてその殻を庭に捨てると、歯も健康になり、その年は一年皮膚にできものができず健康に暮らせるといわれています。
ドライフルーツと木の実ともち米でできたヤッパp(약밥 ヤkパp)
テボルムの食べ物にはヤッパpもあります。
ヤッパpとは蒸した餅米と豆や栗、ナツメの実、松の実などの木の実をまぜ込んで、しょうゆ、蜂蜜、砂糖、ごま油などで味付けした甘い食べ物です。
もち米が主原料ですが、位置づけはおやつのような感じです。
甘いのであまりたくさんは食べられませんが、これもナッツやドライフルーツがふんだんに入っていて、とてもおいしいです。
耳がよくなるお酒?クィパルギスl(귀밝이술)
プロムと同様に夜が明けた後の朝にお酒を飲む風習もあります。
テボルムの朝に飲むお酒(冷たい清酒)はクィパルギスl(귀밝이술)と呼ばれます。意味は「耳を明るくするお酒」で、漢字語では「耳明酒(이명주)」と呼ばれます。
その名の通り、テボルムの朝にクィパルギスl(귀밝이술)を飲むとその年は耳がよくなり、良い知らせばかり聞くことができるといわれます。
この日は普段お酒を飲まない人や女性や子供にも少しずつ主人が注いでやり、皆で飲むということです。
テボルムの風習
食べ物だけでなく、風習も本当にいろいろあります。
左義長やどんど焼きを連想させるタルジプテウギ(달집태우기 タlジpテウギ)
日本でも小正月には左義長とかとんど焼きなどと言って火を燃やす習慣がありますが、韓国でも木と藁を集めて円錐形に作った「タルチプ(달집 月の家)」を燃やす風習があります。
何か日本と通じるものがありそうですね。普通は14日か15日の夜に行います。除厄招福や、豊作を願うという意味もありますが、遊びの側面もあるようです。
子どもも外国人も一度はやってみたいチィブルノリ(쥐불놀이 チュィブlノリ)
チィブルノリ(쥐불놀이)は底に穴をあけた粉ミルクなどの空き缶に長い針金で持ち手を付けたものに木切れなどを詰めて火を入れて、ぐるぐる振り回す遊びです。
夜に行うので、火で円が描かれて壮観です。
村の子供たちがこれを回して放り投げて遊びます。これで焼き畑を行い、枯草に潜んでいる虫を殺します。
満月だからお月見!タルマジ(달맞이 タlマジ)
夕暮れに松明をもって山などの高台に上り、上ってくる月を迎えることをタルマジと言います。
私は2021年2月26日テボルムの明け方の満月を見ました。前日は雨で見られなかったのですが、雨はやんで、雲がかかった幻想的なおぼろ月が金色に輝いていました。
夜明かしするポルムセギ(보름새기 ポルmセギ)
ポルムセギとは、夜明かしをすることで、朝まで寝ないで火の番をします。
暑さを売る?トウィパルギ(더위팔기 トウィパlギ)
トウィパルギを直訳すると、「暑さ売り」です。早朝日が昇る前に、その年の夏の暑さを誰かに売ると夏バテしないといわれています。
でも暑さを売るって、いったいどうやって??
その方法は、15日の早朝、日が昇る前に、友達やご近所さんに会って名前を呼び、もし相手が応えたら、「私の暑さを買っていって(ネ トウィ サガゲ 내 더위 사가게)」というだけでOKです。でも、相手が呼びかけに答えずに「私の暑さをまず先に買っていって(ネ トウィ モンジョ サガゲ 내 더위 먼저 사가게)」と言ってしまうと、あら大変、暑さがこちらに来てしまうというわけです。
ゲームのようでおもしろいですね。
さらに面白いことには、家畜の暑さを和らげる方法まであるのです。
やはり15日の夜明け前に、東に伸びた桃の枝を折って牛などの首にかけてやると夏の暑さを避けることができるというのです。
ここには紹介しきれませんでしたが、まだまださまざまな風習があります。
テボルムは日本の松の内と同じように正月の延長線上にあると考えられているので、正月の遊びであるユンノリというすごろくに似た遊びやコマ回しなどもします。
興味のある方は調べてみてください。
(参考)
ウィキペディア(チョンウォルテーボルム 정월 대보름)韓国語
など
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