韓半島非武装地帯DMZの旅~高城統一展望台とDMZ博物館 - True Vine

韓半島非武装地帯DMZの旅~高城統一展望台とDMZ博物館

南北軍事境界線を望む旅

DMZとは

前回ご紹介した金日成(キム・イルソン)の別荘がある高城郡(コソングン)の花津浦(ファジンポ)からさらに北上すると、DMZがあります。

DMZとは、Korean Demilitarized Zoneの略で、韓半島非武装地帯のことです。

ご存じの通り、朝鮮半島は第2次世界大戦後、ヤルタ会談によって北緯38度線以北をソ連、以南をアメリカが分割統治することになりました。

その後1950年に朝鮮戦争が勃発し、1953年に、分断の固定化に反対した韓国軍を除いた、国連軍と朝鮮人民軍及び中国人民志願軍の間で休戦協定が結ばれて、停戦ラインができました。

この停戦ラインが現在まで南北の軍事境界線となり、北は朝鮮民主主義人民共和国、南は大韓民国が樹立し分断国家状態が続いています。

その軍事境界線から南北にそれぞれ2kmの地帯DMZすなわち韓半島非武装地帯となっていて、黄海のイムジン川河口から日本海側まで約248kmにわたって南北の軍事衝突を防ぐ緩衝地帯の役割をしています。

DMZには高い鉄条網が張り巡らされていて、立ち入るためには韓国軍でもUN軍司令部の許可が必要で、一般人の立ち入りはもちろん厳しく規制されているため、自然がそのまま残されていて近年その生態系も注目されています。

今回はそのDMZを望める高城(コソン)統一展望台と、その近くにあるDMZ博物館を訪ねてきました。

高城統一展望台

日本海側の韓国最北端にある高城統一展望台に行くには、まず、道中にある統一展望台出入申請所という所で申請書を作成しなければなりません。

車を指定されたところに縦列駐車して、入り口に向かうとテントでコロナ禍でおなじみになった発熱チェックとQRコード登録があり、手首にピンクのテープを巻いてもらってから建物の中へ。

申請書には、運転者の名前や生年月日、住所、電話番号や車のナンバー、同乗者の名前と年齢などを書き込み、駐車料金と観覧料を支払うと、チケットをくれ、統一展望台に行く時間を指定されます。

申請所の建物尾内には土産物屋が並んでいて、双眼鏡のほか、北朝鮮のお酒や、歌謡曲のUSBなども売っていて昔っぽいちょっと不思議な雰囲気でした。

ここでは身分証明書も必要と聞いていましたが、今回特に提示は求められませんでした。

 

統一展望台へは車でさらに10分ほど北上します。

途中にある検問で軍人さんに申請書などを見せると、決められた場所以外で写真撮影をしないことを念を押され、ダッシュボードの上に置いておくようにと「統一天文台観光」と大きく書かれた黄色いプラスチックシートをくれました。

 

車ごと消毒液を振りかけられて、またしばらく走ると大きな駐車場につきました。

右手には古い列車の車両を使ったカフェがあり、左手には土産物店や売店があります。

ここに駐車して前方の高台にそびえる統一天文台までは徒歩で坂道を登って行きます。

坂の上に登りきるとそこには正面に近代的に新しく建てられた統一展望タワーと現在は閉鎖中の旧統一展望台が並んでおり、その右後ろには大きな十字架もあります。手前には迷彩色の戦闘機と戦車が展示され、小さな売店が並び、左手奥には小さな教会もあります。

真夏の坂道が堪えたのでまずは売店でアイスを買いました。ここにも北朝鮮のお酒が売っていました。

休んでからいよいよ高さ34mの高城統一天文タワーへ。

大きな入り口から入り、そのままエントランスを突き抜けると、目の前にDMZとその向こうの北朝鮮の風景が広がります。

 

右手には美しい海があり海岸にそって砂浜が続き、左手には自然豊かな木々と山、その向こうに金剛山が見えます。

海に小さな島のような出っ張っているところあたりが軍事境界線で、その向こうは北朝鮮です。

再度建物に入ってエレベーターで4階まで登ると、ガラス越しではありますが、360度見渡せる展望台があります。

設置してあった望遠鏡をのぞいて、海岸の岩や詰所の南側の兵士らしき人の姿や、山の上を延々続く鉄条網、遠くにそびえる金剛山などを見ていると、飛んでいる鳥が視界に飛び込んできました。

その瞬間、あの鳥は自由に行き来できるんだよな…とふと思い、鳥の自由さが、人の不自由さと対比されて、胸が痛みました。

私が韓国で知り合った人の中にも、親が北朝鮮出身だという人がいて、教会などでも南北統一を切に祈っている人たちが実際たくさんいることを私は知っています。

親兄弟と生き別れ、敵味方となり、お墓参りもできない状態は、やはり悲しすぎますね。

統一には様々な問題が立ちはだかることはわかりますが、そういう人たちのためにも早いうちに平和で民主的な統一が叶えばいいと思います。

展望台から見下ろすと、先ほど見た十字架の隣に大きな仏像もありました。

この国の人たちの統一を神や仏にすがる気持ちの表れなのでしょう。

時間があれば展望タワーの奥にひっそりとたたずむ小さな教会にも足を運んでみるといいです。

統一展望台教会の中には自由に入れるとても小さな無人の礼拝堂があり、奥は全面ガラス張りになっていてとても良い眺めです。

冷房もきいていて静かな音楽が流れていて…。私もしばし平和統一のためにお祈りをしてきました。

駐車場に戻る手前に、灰色の電話ボックスのような公衆トイレのようなものがたくさん立っていて、係の人が大人は一人ずつ入るようにといいます。

なんとこれ、紫外線による人体消毒ボックスでした。

ドキドキしながら中に入ると韓国語で何やらアナウンスが流れて、すぐに終わり、反対側のドアから出られます。

駐車場まで戻って振り返ったところ。左手が売店、前方の道が展望台に続いている。正面の3つ並んだボックスが人体消毒ボックス。

 

  • 開館日:年中無休
  • 開館時間:9時~16時20分(夏季:9時~17時30分、冬季:9時~15時50分)
  • 入場料:大人3000ウォン、65歳以上1500ウォン、子供1500ウォン(30人以上は団体割引あり)
  • 駐車料金:11人乗り未満は5000ウォン、11人乗り以上は6000ウォン
  • お問い合わせ:033-682-0088

DMZ博物館

統一展望台と同じく出入統制戦の北側に2009年に開館したDMZ博物館があります。

統一展望台から900mの距離ですが、車で移動します。

総面積1万平方メートルを超える広い敷地には、展示館と野外展示場があり、北朝鮮からの脱北者の木造船や鉄条網、DMZの過去、現在、未来についての展示と、心理戦で使われたビラ、DMZから出土した遺物とDMZに生息する動物のはく製、ベルリンの壁の一部など同じく分断国家だった東西ドイツについての展示もあります。

北朝鮮の木造船

朝鮮戦争時の都市の様子

朝鮮戦争時の様子

展示を見ながらふと上を見ると天井から銃口を向けられていました。

朝鮮戦争時のアメリカ紙。日本もアメリカ軍の基地として間接的に深くかかわっていたことがわかる。

朝鮮戦争の休戦協定書。左から英字、地図、ハングル。

にらみ合う南北の兵士。

対戦車地雷

1980~1990年代の北朝鮮のビラ。

1980~1990年代の韓国のビラ。

  • 開館日:毎週月曜日休館
  • 開館時間:9時~18時(11月~2月は9時~17時 )
  • 入館料:無料
  • 駐車料:無料
  • お問い合わせ:033-681-0625

 

高城DMZ平和の道

2019年4月から、DMZ区域が一部一般人に開放されました。高城統一展望台からは徒歩と車で移動する7.9kmのコースと車のみで移動する7.2kmのコースがあり、高城DMZ平和の道と呼ばれて年100万人を超える人々が訪れていたのですが、この新型コロナウイルスの拡散に伴い、感染防止の観点から2020年12月15日から中断されてしまいました。いつかまた再開されたら行ってみたいものです。

 

今回の訪問から帰ってすぐの7月27日に、なんと、昨年6月から断絶していた南北間ホットラインが再び開通したとニュースで報じられ、あまりのタイムリーさに驚きました。

お祈りが利いたのでしょうか?(笑)

全く報じられていなかったのですが、4月ごろから複数回にわたってムン・ジェイン大統領とキム・ジョンウン委員長の間で親書が交わされていたというのです。

南北朝鮮の統一について、日本や韓国や個人にとっての損得で考える人もいるでしょう。

そういう考え方も理解はできますが、人道的に考えて今の状態は不健全だと私は思うので、関係改善、ひいては統一に至ってほしいと願いつつ、今後を見守っていきたいと思います。

 

【北朝鮮に関する書籍紹介】

生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った

北朝鮮と観光

北朝鮮人民の生活–脱北者の手記から読み解く実相

池上彰の世界の見方 朝鮮半島: 日本はどう付き合うべきか

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