コロナ時代の韓国の軍隊入隊と訓練所
軍隊入隊についていった話
今年の初夏のことですが、知り合いの子が軍隊に入隊するのに同行させてもらったことがありました。
よくテレビで見る、家族や恋人と抱き合ってしばしの別れを惜しむ感動的な場面を実際に見られるのかな、とドキドキしていったのですが…。
今日はその時のことを書いてみます。
韓国の兵役義務
韓国では成人男子に兵役義務が課せられていることはよく知られています。
韓国の兵役義務は満18歳以上の男子に課され、19歳の時に受ける兵役判定検査によって級が判定されます。検査は心理検査、身体検査、適性検査などからなっており、1~3級までが現役、4級は社会服務要員、5級は戦時勤労役、6級は兵役免除、7級は再検査とされています。
兵役の期間はまちまちですが、例えば現役兵では、陸軍と海兵隊は18か月、海軍は20か月、空軍は21か月となっています。
私などは長く感じますが、これでもどんどん短くなってきています。その他、常勤予備役と義務警察は18か月、義務消防、海洋警察は20か月、社会服務要員は21か月などとなっています。
ちなみに、兵役中、わずかながら月給も支給されます。2020年兵長基準で軍人月給 540,900원(ウォン)だそうです。5万円くらいですね。
コロナ時代の入隊の風景
本格的な軍隊生活に入る前にまず5週間、新兵訓練所で基本的な訓練を受けます。今回私が同行したところも신병교육대(シンビョンキョユッテ)と呼ばれる師団付属の訓練所です。どこの訓練所に行くかは選ぶことができず、今回入隊する彼も故郷を離れ友達ともバラバラになったと言っていました。
入隊前の最後の食事を家族と一緒にした彼は、髪を短く刈り上げた姿で、手紙を書くリストを紙に書き写していました。訓練所では携帯電話の持ち込みが禁止なので手紙を書くのだそうです。(最近では5週間の訓練を終えた後は日課後のスマホの使用が認められています。)
車で田舎道を訓練所に向かうと同じく入隊する人たちの車で行列ができていました。道路脇には小さな屋台が並んでいて、何を売っているのかと車窓越しに見たら、訓練用品と書かれていて、時計などのようでした。でも実際部隊生活で必要なものは支給されるし、pxと呼ばれる師団内にある売店でも購入できるとのことなので、そのまま通り過ぎていくと、軍人さんが車を止めて何やら紙を渡されました。
紙を読むとなんと、コロナ19のせいで入営行事は実施しないことなどが書かれているではありませんか。普通なら保護者も見守る中、入営行事を行い、整列して保護者にあいさつし、涙のお別れをするはずが、保護者は車から降りることも許されず、ただドライブスルーのように子供だけを下ろしてuターンして帰っていくという味もそっけもない入隊となってしまいました。
帰り道、道端に車を止めて息子と別れを惜しむ家族が散見されました。これから1年半から2年弱の間、自由に会うことができない軍隊生活が始まるのです。軍ではたまにですが死亡事故なども起こっていますから、気持ちはよくわかります。
訓練所での暮らし
訓練所に入ると、まず身体検査が行われます。身長や体重などの測定をして、22種類にも及ぶ体形に合う軍服やトレーニングウエア、靴などの支給を受け、入隊前に検査を行ってから時間がたっているためその間に体調の変化がないか、再度眼科、歯科、整形外科などで検査を受けます。
1週目は軍人としての基本姿勢を学びます。講義形式もあれば討論形式もあり、軍歌や体操(國軍徒手體操)も習います。入隊時に着てきた服などは小包にして家に送ってしまいます。2週目から5週目までは基本戦闘技術を学びます。救急救命法から手りゅう弾、銃の使い方や射撃、ガスマスクのつけ方とガス室体験、夜間行軍などがあるようです。最後は修了式をして、配属先に散っていくというわけです。
敷地内には、教会やカトリックの聖堂、お寺などの宗教施設もあります。日曜日には礼拝などが開かれ、宗派ごとに分かれて宗教活動をすることもできるのです。
訓練所での日課
訓練所でのおおよその日課は以下のようなものです。
6:00 起床
7:40~8:30 朝食、教育準備
8:30~11:40 教育
11:40~14:00 昼食、昼休み
14:00~17:10 教育
17:10~18:30 夕食
18:30~20:30 シャワー
20:30~21:30 掃除
21:30~22:00 点呼
22:00 就寝
私のような日本人がなぜこんな日課まで知っているのかというと、訓練所前で配布してくれた紙に全部書いてあったからです!
幼稚園時代の家庭通信を思い出させるその親切丁寧さにびっくりです。
軍隊と民間をつなぐアプリ
その紙には더캠프(THE CAMP)というアプリも紹介されていました。
このアプリをダウンロードして、会いたい軍人を登録カフェに加入しておけば、活動中の写真を見たり、慰問の手紙をオンラインで書いたり、疑問に思うことを質問したりできるそうです。「うちの子は何で写真に写っていないんですか?」と言った苦情も来るので大変だという話も聞いたことがあります。
変化した兵役文化
他にもその紙には「栄養価の高い食事」とか「季節の特性を考慮した衣服支給」とか、「相互尊重した言語使用」とか、書かれています。もちろん、「暴言、罵詈雑言、過酷な行為、殴打はありません」とあり、極めつけは「オモニ(母親)リーダーシップ」と銘打って、「無条件の愛情」と「理由のある指導」とあります。
モンスターペアレンツという言葉がありましたが、韓国でも一人っ子が多くなり、子供のことが心配で黙っていられない保護者の気持ちを少しでも和らげるため、韓国兵務庁当局もいろいろ神経を使っているのですね。
(おまけ)職業軍人と女医の恋を描いたおすすめドラマ
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